1.はじめに

 

新生児・乳幼児期に症状を出す脳血管奇形には、ガレン大静脈瘤、硬膜動静脈瘻、脳動静脈奇形・瘻がある.大人で認められる動静脈短絡と同じ病変が、子供で認められたと考えるのではなく、その発生や発症の要因、治療には、大人と異なるアプローチが必要である.出生前診断が可能なガレン大静脈瘤や硬膜動静脈瘻がある一方で、脳動静脈奇形・瘻は、出生時に認めることはほとんどない.出生前診断により出生直後から内科的治療や血管内治療が可能な施設への母体搬送が可能になる.ガレン大静脈瘤・硬膜動静脈瘻は、その症状によって治療の緊急度は異なるが、脳動静脈奇形・瘻は、診断されれば治療を急ぐ必要がある.

 

2.新生児期の動静脈瘻の病態生理 (9)

 

頭蓋内に動静脈短絡があっても、出生前に心不全が顕在化することは殆どない.しかし出生前にすでに脳虚血による脳軟化が存在する場合もある.出生とともに胎盤循環が無くなり、肺呼吸が始まれば、肺抵抗が低下し、頭蓋内の動静脈短絡により、右心負荷がかかり心拡大を呈する.動脈管開存、卵円孔開存など胎児循環の遺残や肺高血圧症、右心不全、頻脈、三尖弁閉鎖不全、不整脈を伴うことがある.心拍の増加、一回拍出量の増加で心筋負荷の増加、さらに拡張期圧の低下は、冠動脈血流の低下につながり心筋虚血が起こり、やがて左心不全も起こる.シャントの量の多い場合は、拡張期に大動脈血流の脳へ逆流が起こるため下行大動脈への血流は少なく、腎臓・肝臓・腸管などへの血流は非常に不良であり、無尿・腎不全を伴う.右心負荷のため静脈圧は高く、肝不全を伴い、肺高血圧のため呼吸不全を起こす.新生児の肺は、未熟のためさらに呼吸不全が進行する.肝機能障害で、出血傾向・血小板現象など凝固系異常も伴う.静脈圧亢進は、髄液循環不全を起こし、脳の正常発達を障害し、巨頭症、水頭症、稀にはキアリ奇形を合併することになる.この時期の髄液の吸収は、Pacchionian granulationの発達が未熟であるため、脳表静脈から吸収されるため、静脈圧亢進はこの吸収機能の低下をもたらす.脳障害は、静脈性梗塞や脳萎縮・石灰化の形をとりmelting brain syndromeと言われる.出生時の石灰化や痙攣は、既に高度の脳障害があることを示す.髄鞘化障害から脳の成熟障害が起こり、高次機能障害につながる.以上のように、脳機能以外にも、心機能、呼吸機能、肝機能、腎機能の障害が来る.Lasjauniasらは、これらの機能を点数化したneonatal evaluation scoreを提唱し、その点数により、新生児期の治療の適応を、適応なし(7点以下)、緊急の血管内治療(8-12点)、経過観察(13点以上)に分けている.画像上で脳障害が無くても多臓器不全のある患児では、塞栓術が上手くいっても正常な脳発達は困難とされる.緊急の血管内治療の目的は、シャント量を減らし(1/3程度が目標とされる)、全身状態を改善し、体重が増加するまでの時間を稼ぐことであり、病変自体の根治ではない.新生児期に経過観察とされた場合も注意深い観察が必要で生後5ヶ月ごろには症状の存在にかかわらず血管内治療が必要である.この時期以降になると脳の成熟障害が起こるとされる.内科的治療や血管内治療に対する反応が十分でないときには、合併する心奇形や動脈管開存も疑う.動脈管開存症例では、左→右シャントがあり、脳血管内治療の前に動脈管閉鎖術を先行させる場合もある.

 

3.診断

 

対象が新生児であること多いため、低侵襲の画像診断が望まれる.優先順位として、超音波検査 > CT=MR >> 脳血管撮影の順になるが、患者の状態・検査目的にあわせて選択する.ベッドサイドで施行可能な超音波検査ではカラー・ドップラー検査もおこなう.CT/MR検査においては体温管理に注意をする.CTによる石灰化の評価も重要である.脳血管撮影は、血管内治療を予定しない場合は、侵襲的であり適応はない.

 

4.ガレン大静脈瘤

 

ガレン大静脈瘤は、頭蓋内血管奇形の1%とされる稀な血管病変である.これは小児血管奇形の30%にあたる.治療方法の進歩で、生命予後は向上しても、機能予後が不良の症例もあり、今後治療の適応も考えていく必要がある (10).ガレン大静脈瘤には、直静脈洞の欠損・形成不全や大脳鎌洞、後頭静脈洞の遺残が合併することがある.

 

A. 発生学的背景及び血管構築

 

いわゆる“ガレン大静脈瘤”には、真のガレン大静脈が拡張したvein of Galen aneurysmal dilatation (VGAD)と発生学的にガレン大静脈ではなく胎生期の静脈で12週までに消退するmedian vein of prosencephalonが遺残して拡張したvein of Galen aneurysmal malformation (VGAM)がある (2,19).臨床症状や治療方法が異なるためこの両者の鑑別は重要である.このMedian veinはprimitive internal cerebral veinとも呼ばれ、発生初期の終脳の脈絡叢の導出静脈であり、胎生10週頃までに一対のinternal cerebral veinsに置き換わる.退宿したmedian vein of prosencephalonの頭側の一部がvein of Galenとして残存しinternal cerebral veinと交通性を持つ (19).

 

動静脈瘻がaneurysmal sacそのものにあるmural typeと、介在する動脈のネットワークを介してaneurysmal sacとつながるchoroidal typeに分けられる (2).深部静脈系との交通性はない.VGAMは、正常な脳静脈還流に関与していないため経静脈的に瘤内塞栓が可能である.VGADは、AVM、硬膜動静脈瘻が原因で二次的にガレン大静脈が拡張したものであり、深部静脈系と交通があるため経静脈的塞栓術は、原則的に禁忌である.

 

VGAMの栄養血管は、anterior and posterior choroidal arteries、posterior pericallosal artery、middle cerebral artery, circumferential artery、mesencephalic arteryである.Lenticulostriate artery、anterior and posterior thalamoperforating arteryがshunt部位に向かう場合もある.栄養血管と拡張した静脈瘤間には、arterial mazeと呼ばれるnidusに似た構造がある症例もあり、動静脈奇形によるVGADとの鑑別が重要である.VGAMとVGADの血管構築上の他の鑑別点は、中脳を貫通するtransmesencephalic arteries (13) とdeep venous drainageが前者にはなく、後者で存在することである.

 

B. 臨床症状

 

新生児期発症のVGAMは高度の心不全を合併しており、多くはchoroidal typeである.小児期発症のVGAMの多くはmural typeで、水頭症、頭囲拡大、軽度の心不全、痙攣等で発症し、さらに年齢が上がると、局所神経症状、頭痛、くも膜下出血が主な症状となる (2,3).

 

C. 治療

 

治療には、保存的治療、直達手術、血管内手術、定位的放射線治療があり、個々の患者の症状、血管構築を考え治療方針をたてる.Mural typeの病変であれば、直達手術でも治療が可能の場合があるが、choroidal typeの手術は難しく、VGAMの直達手術の死亡率は33.3-91.4%と報告されている (.4,5) 血管内手術により、VGAMの治療成績は飛躍的に向上したが、大きな動静脈シャントがあり新生児期に心不全を呈する症例は、最も治療が難しく (5)、シャントが小さい場合には治療を必要としない症例もある.出生前にエコーで診断された症例でも、必ずしも新生児期に治療が必要とは限らず、患者の臨床症状でその適応を決める.現在では直達手術よりも侵襲の少ない血管内手術が治療の第一選択にと考えられている (4,7,10,12,14).定位的放射線治療は、治療効果が出るまで時間がかかるため、治療の第1選択にはならないが、年長児の治療を急がない症例には治療のオプションとなる (18).

 

病変への到達ルートは、経大腿動脈、経大腿静脈、経静脈洞交会がある.現在では、まず経動脈的塞栓術が行われ (10)、栄養血管まで到達できないときに経静脈的や経静脈洞交会ルートが選択される (11,14).経静脈洞交会塞栓術は、静脈洞交会の穿刺部出血や瘤破裂による出血の合併症が多いとされる.塞栓物質には、経動脈的塞栓術にはNBCAやコイルが用いられ、経静脈的塞栓術にはコイルが用いられる.

 

一回の経静脈的塞栓術のend pointに明確なものはないが、staged interventionが薦められる.僅かの短絡血流低下でも臨床症状の改善が認められることが多い.VGAMでは深部静脈系との交通性はないが、急速に動静脈短絡を閉塞すると(特に導出路を閉塞すると)急性脳浮腫、視床出血、脳室内出血、クモ膜下出血を起こす場合がある.これは、未熟なgerminal layerに出血が起こりやすいこと、また視床穿通動脈の領域にperfusion pressure breakthroughが起こるためと考えられている (15).

 

D. 水頭症

 

VGAMの約47%の症例に水頭症を合併し、その多く(73%)は幼児、年長児の症例である.水頭症や頭囲拡大が起こるメカニズムは、中脳水道の圧迫ではなくhydrodynamicsの異常によると考えられている.水頭症の治療は、まず血管内手術で動静脈シャントを減らすべきである (20).

 

E. 治療成績

 

Lasjauniasらの120例 (10)のVGAMの経験では、出生前診断が24例あり、50例が新生児症例、35例が幼児症例、12例が年長児症例であった.12例でfollow-up出来ず、21例に治療の適応がなかった.5症例が自然に血栓化した.78例に経動脈的塞栓術を行ない、血管撮影上の治癒は38症例で可能であった.治療を行った患者(78例)の内、47症例が正常に成長し、10例が一過性の脱落症状を呈した.6例が本来の病気のための神経学的脱落症状を残し、3例が術後の永続する脱落症状を呈し、7症例が死亡した.

 

5.脳硬膜動静脈瘻

 

A. 発生学的背景

 

脳硬膜静脈洞の発生は、以下のごとくである.胎生4ヶ月後半から7ヶ月にかけて横静脈洞の外側のjugular bulbから正中のtorcular herophiliに向かう静脈洞の拡張ballooningがおこり、5ヶ月頃からその径の均一化が起こり、出生前に成人型に近づくが、jugular bulbや海綿静脈洞部への流出は未発達で、emissary vein、後頭静脈洞、辺縁静脈洞がその代わりに発達する (17).Jugular bulbは、後頭静脈洞の閉塞などに伴い、生後数週間かけ発達し、さらに海綿静脈洞部への流出には時間がかかり、2歳のころに成人のそれに近づくといわれている.横静脈洞の走行も6ヶ月までは、タウン像で、なだらかな内側凸のカーブを描いているのが、その後は成人の走行に近づく.脳硬膜静脈洞の発達不全は、大きな静脈洞の拡張venous lakeとなる.ここに動静脈短絡が形成される.よって栄養血管の基本は硬膜の動脈である.一般的に、短絡血流は、low flowとされ、新生児期の心不全は少ないとされるが、ガレン大静脈瘤と同様に心不全を起こす場合もある(8).S字状静脈洞、横静脈洞、上矢状洞遠位に起こるが、torcular herophiliなど正中部の硬膜静脈洞の関与がある場合、正常な脳還流路を共有するため治療は困難で予後不良とされる.Venous lake内に血栓を伴うことも多く、このため凝固系異常を合併し、出血傾向などの全身症状に対して抗凝固療法を必要とすることもある(Kasabach-Merritt syndrome).静脈流出路の制限・静脈圧の上昇などのため、静脈性梗塞、melting brain syndromeになるため、予後は不良である.

 

B. 分類

 

先天性硬膜動静脈瘻には、dural sinus malformation (with AV shunts)、infantile dural arteriovenous shunt (DAVS)、adult DAVSの3種類に分類され、VGAMよりも発生頻度ははるかに低い (6,9,16).男女比はやや男性が多いとされる.

 

Dural sinus malformationは、巨大な硬膜静脈洞とそこに硬膜動静脈瘻があり、心不全、凝固異常、頭蓋内圧亢進、雑音、頭皮静脈拡張、頭囲拡大、巨頭症、水頭症、精神発達遅延、けいれん、局所神経脱落症状などの症状を呈する.時には、静脈洞の血栓症を伴い、静脈の導出障害やさらに凝固異常も伴うことがある.Infantile DAVSは、新生児期、幼児期に認められる単発または多発性のhigh flowの硬膜動静脈瘻で、拡大した硬膜静脈洞を伴い、軽度の心不全、巨頭症、精神発達遅延などを呈する.硬膜静脈洞の閉塞を伴うことは少なく、pial supplyが認められる.病変は、一側性・多発性が特徴である.心不全は軽度であるため、緊急の塞栓術が必要になることは少ない.Adult DAVSは、成人の硬膜動静脈瘻と同じで静脈洞血栓をtriggerとした後天性病変と考えられており、海綿静脈洞に多い. 成人の海綿静脈洞病変と異なり、Lasjauniasらは、経動脈的塞栓術を薦めている (9).

 

C. 治療

 

新生児期に発症した場合の治療は、利尿剤、強心剤、呼吸管理などの内科的治療以外に、外科的治療や血管内治療が必要となる.血管内治療は、経動脈的塞栓術、経静脈的塞栓術、直接穿刺による経静脈的塞栓術が行われる.VGAMと異なり、積極的に経静脈的塞栓術も行われる.経動脈的塞栓術では、NBCAを用いてシャントそのもの、またはその近傍で閉塞する.実際には、経動脈的と経静脈的塞栓術を組み合わせて治療が行われる.静脈の還流路に閉塞・狭窄がある症例では、術後管理に全身のヘパリン化や抗凝固薬の投与が必要な場合がある.

 

D. 治療成績

 

Lasjauniasら (11)の29例の報告では、9例 (31.3%) が死亡し、7例(24.1%)が高度の神経学的脱落症状を残し、13例 (44.8%) が軽度の神経学的脱落症状または神経学的脱落症状はなかった.


ヘリでやってきたミーちゃん


 

文献

 

1) Casasco A, Lylyk P, Hodes JE, et al: Percutaneous transvenous catheterization and embolization of vein of Galen aneurysms. Neurosurgery 28:260-266, 1991

 

2) Garcia-Monaco R, Lasjaunias P, Berenstein A: Therapeutic management of vein of Galen aneurysmal malformations.In:Vinuela F, Halbach V, Dion J(eds).Interventional Neuroradiology.Raven Press,New York.pp 113-127, 1992

 

3) Gold AP, Ransohoff J, Carter S: Vein of Galen malformation.Acta Neurol Scand (Suppl 11)40: 5-31, 1964

 

4) Hoffman HJ, Chuang S, Hendrick B,, et al: Aneurysms of the vein of Galen. Experiences at the Hospital for Sick Children, Toronto. J Neurosurg 57: 316-322, 1982

 

5) Johnston IH, Whittle IR, Besser M, et al: Vein of Galen malformation:diagnosis and management.Neurosurgery 20: 747-758, 1987

 

6) Kincaid PK, Duckwiler GR, Gobin YP, et al: Dural arteriovenous fistula in children: endovascular treatment and outcomes in seven cases. AJNR Am J Neuroradiol 22:1217-1225, 2001

 

7) Komiyama M, Nakajima H, Nishikawa M, et al: Vein of Galen aneurysms: experiences with eleven cases. Interventional Neuroradiol 7:99-103, 2001

 

8) Komiyama M, Nishikawa M, Kitano S, et al: Transumbilical embolization of a congenital dural arteriovenous fistula at the torcular herophili in a neonate.Case report.J Neurosurg 90: 964-969, 1999

 

9) Lasjaunias P: Dural arteriovenous shunts.Vascular diseases in neonates,infants and children.Interventional neuroradiology management.Springer-Verlag,Berlin.pp 321-371, 1997

 

10) Lasjaunias P, Alvarez H, Rodesch G, et al: Aneurysmal malformations of the vein of Galen.Follow-up of 120 children treated between 1984 and 1994.Interventional Neuroradiol 2: 15-26,1996

 

11) Lasjaunias P, Magufis G, Goulao A, et al: Anatomical aspects of dural arteriovenous shunts in children. Review of 29 cases. Interventional Neuroradiol 2:179-191, 1996

 

12) Lasjaunias P, Rodesch G, Terbrugge K, et al: Vein of Galen aneurysmal malformations.Report of 36 cases managed between 1982 and 1988.Acta Neurochir (Wien) 99: 26-37, 1989

 

13) Lasjaunias P, Terbrugge K, Choi IS: Transmesencephalic arteries and veins. Angiographic aspects in tectal vascular lesions. Acta Neurochir (Wien) 92: 138-143, 1988

 

14) Lylyk P, Vinuela F, Dion JE, et al: Therapeutic alternatives for vein of Galen vascular malformations.J Neurosurg 78: 438-445. 1993

 

15) Morgan MK, Johnston IH, Sundt TM: Normal perfusion pressure breakthrough complicating surgery for the vein of Galen malformation: report of three cases. Neurosurgery 24:406-410, 1989

 

16) Morita A, Meyer FB, Nichols DA, et al: Childhood dural arteriovenous fistulae of the posterior dural sinuses: three case reports and literature review. Neurosurgery 37:1193-1200, 1995

 

17) Okudera T, Huang YP, Ohta T, et al: Development of posterior fossa dural sinuses, emissary veins, and jugular bulb: morphological and radiologic study. AJNR Am J Neuroradiol 15: 1871-1883, 1994

 

18) Payne BR, Prasad D, Steiner M, et al: Gamma surgery for vein of Galen malformations. J Neurosurg 93: 229-236, 2000

 

19) Raybaud CA, Strother CM, Hald JK: Aneurysms of the vein of Galen:embryonic considerations and anatomical features relating to the pathogenesis of the malformation.Neuroradiology 31: 109-128, 1989

 

20) Zerah M, Garcia-Monaco R, Rodesch G, et al: Hydrodynamics in vein of Galen malformations.Child's Nerv Syst 8: 111-117, 1992

 

 

2004.4.8記 


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新生児・乳幼児期の脳血管奇形に対する血管内治療