Melting Brain Syndrome

meltは溶けるという意味で、小児期の脳に慢性の脳虚血が持続した場合、脳の神経細胞やその支持細胞が障害を受け、細胞死していく病態を指します.

小児の動静脈シャント疾患(ガレン大静脈瘤、硬膜動静脈瘻、脳動静脈瘻)などで、疾患によらず、動静脈の短絡があり、静脈系に動脈血が流入し、動脈化するため「静脈性高血圧」になります.これに静脈洞や頚静脈に閉塞や狭窄性の変化が加わるため、さらに静脈性高血圧を悪化させます.


具体的には、画像診断上、脳萎縮、脳の虚血性変化、石灰化が認められ、臨床的に、精神発達遅延や脳機能障害が起こります.乳児・幼児の場合、一見、正常に発達しているように見えても、慢性の虚血による精神発達遅延が起こっていることがあります.運動機能障害が起こるのは最後で、初期の精神発達障害には気付かれないことも多いです.


新生児期に急性で高度の心不全が無く、緊急の治療を必要としない場合も、生後5-6ヶ月で治療を薦められるのは、正常な脳の発達をさせるためで、この時期を逸すれば、たとえ動静脈シャントが、その後、治療によって消えても、高度の精神発達遅延を残すことがあります.つまり、解剖学的に病変は消えても、症状が一生残ってしまうことになります.


よくある事例は、急性期治療が必要がないと判断され、経過観察され、そのまま治療されず、治療のタイミングを失い、次の検査を行った時には、高度の脳虚血 melting brain syndromeになっていることがあります.この場合、その後、治療を行っても、既に脳に起こった障害を直すことは出来ないことになります.


2009.4.1記


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