Wyburn-Mason Syndrome

フランスを始めとするヨーロッパでは、Bonnet-Dechaume-Blanc syndromeと呼ばれ、英語文化圏ではWyburn-Mason syndromeと呼ばれることが多いようですが、基本的には同じ病態についての病名です.

 

基本病変は、脳、網膜 (他、眼球、視神経、視覚伝導路)の両者に動静脈奇形・動静脈瘻が認められます.また、この二つの部位以外に、顔面 (上顎・下顎)にも同様な動静脈シャントが認められます.顔面の病変が明らかに動静脈奇形の場合もありますが、淡い皮膚色の変化だけの様な病変のときもあります.

 

これらの病変が、同程度にすべての部位に存在するのではなく、程度も、部位も患者さんごとに異なります.

 

この病気自身、頻度は非常に低く、性差、人種差はないとされています.また、遺伝性も認められていません.遺伝性出血性毛細血管拡張症 (HHT:hereditary hemorrhagic telangiectasia)との関連はありません.

 

脳病変は、視覚伝導路に加え、視床・中脳・小脳・後頭葉にも存在することがあります.

 

症状は、病変の部位、その性状によるわけですが、脳病変では、出血が最も多く、視覚路では、視野障害、視力低下・視覚障害が認められます.顔面の動静脈シャントから大量の鼻出血や歯肉出血が起こることがあります.この出血が致命傷になる場合もあります.また、皮膚病変も認められる場合もあります.

 

過去には、上記のように多発病変が認められる、非常に頻度の低い疾患との理解でしたが、最近は、中枢神経系の分化の過程で、同じ体節性での神経堤や中胚葉の成分に受精後4週間以内に分化異常が起こるため、同じ体節、つまり顔面と視覚路、眼球と視床などに病変が同時に起こるように考えられるようになってきました.


正確には、脳の部分を体節と表現するのは、誤りですが、脊髄・脊椎が背骨毎の単位で、発生学的に同じレベルの神経・骨・筋肉・皮膚等に、血管奇形病変が起るのに似ており(Cobb症候群)、これが脊髄よりも頭側の大脳・小脳・脳幹に起こった病気が、Wyburn-Mason syndromeと言うことになります.

 

Cerebrofacial Arteriovenous Metameric Syndrome (CAMS)と呼ばれます.和訳すると、脳・顔面の分節性の動静脈シャント疾患になります.脳の部位を3つに分け、CAMS-1, CAMS-2, CAMS-3に細分されます.CAMS-1は、内側前脳に関係し、鼻部・視床下部に病変があり、CAMS-2は、外側前脳が関与し、上顎・視床・後頭葉に病変があり、CAMS-3は、外側菱脳が関与し、下顎・小脳・橋に病変があるとされます.この3分割が、正しいか分かりませんし、その血管病変は、この3部位にうまく分けられないことも多いです.脊髄には、31体節があるため理論的には31に細分可能です.つまり、Spinal Arteriovenous Metameric Syndrome (SAMS-1から31)となります.


これらの疾患は、動静脈奇形や動静脈瘻などの動静脈シャント疾患が、顔面と脳に同時に起る場合で、同様に静脈性血管奇形が顔面と脳に起ることもあり、古典的にはSturge-Weber症候群、最近は、Cerebrofacial Venous Metameric Syndrome (CVMS)と呼ばれることもあります.


脳内病変も顔面病変も治療が困難であったり、出来ない病変が多く、眼底の血管奇形で失明することもあります.私は、3人ほど、治療したり経過観察をしましたが、お一人は脳出血でお亡くなりになりました.他の御二人も治療に難渋しています.


             
論文2から引用

 

参考文献

 

1. Wyburn-Mason R: Arteriovenous aneurysm of mid-brain and retina, facial naevi and mental changes. Brain 66:

 

2. Bhattacharya JJ, Luo CB, Suh DC, et al: Wyburn-Mason or Bonnet-Dechaume-Blanc as cerebrofacial arteriovenous metameric syndrome (CAMS). A new concept and a new classification. Interventional Neuroradiol 7:5-17, 2001

 

 

2004.4.1記、2012.11.9追記 


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