瀰漫性新生児血管腫症 Diffuse Neonatal Hemangiomatosis (DNH)
瀰漫性新生児血管腫症 Diffuse Neonatal Hemangiomatosis (DNH)
瀰漫性新生児血管腫症(DNH)は、出生時や新生児期に、時には出生前から、症状が出る稀な疾患で、時に致命的になることがあります.その特徴は、皮膚や内臓など複数の臓器に多数の血管腫が認められることです.その血管腫は悪性腫瘍ではなく、皮膚病変は全身に認められ、その径は0.5-1.5cmとされ、その数は、50-500個と多数です.多数の臓器に病変が認められますが、皮膚に続き、肝臓にも、多くの病変が認められます.他に、肺、消化管や中枢神経系(脳と脊髄)にも認められます.頻度は下がりますが、口腔、舌、脾臓、腎臓、腸間膜、心臓、泌尿器系にも認められます.未熟児に多く、1:2-4と女児に多いとされます.
病変の分布
皮膚 100%, 肝臓 64-100%, 中枢神経系 64%, 肺 52%, 消化管 52%など.
60%の患児が数ヶ月のうちに高流量の心不全、内臓出血、特に消化管出血や中枢神経系の症状のため死亡するとされ、他に呼吸不全、眼異常、消費性凝固異常 consumption coagulopathyなども死因となり、この肝障害からの消費性凝固異常は、血小板減少、さらに致命的な出血につながります.
治療は、インデラール(propranolol)が基本ですが、それが効かない場合、ステロイド、インターフェロン α、オンコビン(抗がん剤)、外科的切除、放射線療法、レーザー治療、塞栓術等が考慮されます.
乳児血管腫(infantile hemangioma)や良性の新生児血管腫症(benign neonatal hemangiomatosis)とこの瀰漫性新生児血管腫症 DNHは臨床的に全く異なり、後者は高い致死率を示します.また、組織学的にも異なり、後者は、一層の内膜細胞に囲まれた拡張した薄い壁から出来たチャンネルから出来ています.
最近は、良性の乳児血管腫から、ここで紹介した多数の血管腫がある血管腫症 hemangiomatosisさらに、Phace症候群まで、いろんな形態をとる疾患群(広いspectrum)と考えられるようになってきました [Metry 2004].
Diffuse neonatal hemangiomatosis (DNH)は、いくつかのentityを含んでいるとする考えがある [Glick 2012].multiple/multifocal vascular lesionsがある場合、今までのDNHの多くは、Glut-1 陽性のinfantile hemangioma (hemangiomatosis) (IH)であり、この場合、皮膚以外の臓器に同じ病変がある場合とない場合がある.IHとは異なり、より予後の不良なmultifocal lymphangioendotheliomatosis with thrombocytopenia (MLT)を鑑別する必要があり (Table 1)、これには皮膚病変の生検が、最も有効とされる.予後、治療方法が異なるIHとMLTなので、積極的な鑑別が求められる.また同じように過去のIHとされた病変には、IHにもMLTにも合致しない病変もある.またmultiple lesionsとされた病変は、よくその分布を観察するとsegmental distributionのことがあり、その場合は、よりsegmental IHの診断の方が適切と考えられる.
参考文献
Holden KR, Alexander F: Diffuse neonatal hemangiomatosis. Pediatrics 46:411-421, 1970
Golitz LE, Rudikoff J, O’Meara OP: Diffuse neonatal hemangiomatosis. Pediatr Dermatol 3:145-152, 1986
Balaci E, Sumner TE, Auringer ST, et al: Diffuse neonatal hemangiomatosis with extensive involvement of the brain and cervical spinal cord. Pediatr Radiol 29:441-443, 1999
Metry DW, Hawrot A, Altman C, Frieden IJ: Association of solitary, segmental hemangiomas of the skin with visceral hemangiomatosis. Arch Dermatol 140:591-596, 2004
Glick ZR, et al: Diffuse neonatal hemangiomatosis: an evidence-based review of case reports in the literature. J Am Acad Dermatol 67: 898-903, 2012
2010.6.2.記載、6.8、2013.5.21 、2021.4.7, 4.8追記