乳児血管腫とプロプラノロール

フランスからの2008年のレポートです.乳児血管腫は通常、経過観察されますが、治療が必要な場合、ステロイド、インターフェロン アルファー、ビンクリスチンなどが投与され、稀に血管内治療が行われます.放射線治療の適応はありません.このレポートで、2例の乳児血管腫の患児に、ステロイド治療をしていましたが、あまり効果なく、血管腫への血流増加による心不全ではないけれども心負荷があるため、プロプラノロール(商品名:インデラール)を投与したところ、血管腫まで小さくなったのに気づき、この2例に続き、9人の乳児血管腫の患児に同様の治療を行ったところ、全例で効果があり、縮小したとしています.その投与量は、2から5 mg/kg/dayでした.プロプラノロールは、本来、交感神経系に対するベーター ブロッカーで、高血圧、狭心症、頻脈など心臓に対するお薬です.これが乳児血管腫に効いたメカニズムに関して、著者らは、1、乳児血管腫の中の血管の攣縮を起こした、2、VEGFやbFGF等の遺伝子の発現を押さえ、乳児血管腫の内皮の自然細胞死を引き起こした、などを考えています.


たった11例の経験ですが、New England Journalという有名雑誌に掲載されたため、インパクトがあります.この後、恐らく、いろんなところで検証が進んでいると推測されます.


Leaute-Labreze C, de la Rque ED, Hubiche T, et al: Propranolol for severe hemangiomas of infancy. NEJM 358:(4) 2549-2651, 2008


乳児血管腫だけでなく、Kasabach-Merritt syndromeも症例に対しても、 プロプラノロールの投与が行なわれ、有効な報告もされるようになっています.


Hermans DJJ, van Beynum IM, van der Vijver RJ, et al: Kaposiform hemangioendotheliom with Kasawach-Merritt syndrome: a new indication for propranolol treatment. J Pedatr Hematol/Oncol 33:e171-e173, 2011


2011.6.13 追記


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