手・足の指の動静脈奇形・動静脈瘻

この部位の病変であるからといって、他の部位の動静脈奇形・動静脈瘻の病変と治療方針の基本は変わりません.先天性の病変以外にも、外傷を受けやすいため外傷性の動静脈瘻や感染による動静脈瘻も、しばしば認められます.動静脈奇形と動静脈瘻の鑑別は、簡単でない場合も多いです.前者は、ナイダス nidusと言われる異常血管網が動脈と静脈の間に存在し、後者はそれがなく、直
接、動脈と静脈が吻合しており、動静脈シャント shuntと言うこともあります.このようなナイダスが、皮膚の表層にある場合や深部の筋肉層等にある場合等、その部位も診断する必要があります.血管撮影よりも3次元CT (CT angiography)の方が、立体的な解剖の理解には有用です.


右の画像は左手の動静脈奇形の患者さんのCT angiography.

 

症状は、外見の異常・腫脹、心拍に一致した拍動、熱感、疼痛、神経麻痺、さらに出血、血液凝固異常などがあります.正常組織への血液供給が減る(盗まれる:盗血現象 steal phenomenon)ため、虚血による潰瘍・壊死が起こることもあります.短絡動脈血のため静脈内の圧が上昇し(静脈性高血圧 venous hypertension)、正常な組織潅流が阻害されるため虚血になるとも考えられています.短絡血液量が多くなると心不全が稀に、起こることもあります.治療には、保存的治療(対症療法)、塞栓術、外科的治療 (根治的手術、部分的手術)などがあり、塞栓術には、外科的手術の前処置として行う場合と、これのみで治療する場合があります.使われる塞栓物質には、粒子性の物質(ポリビニルアルコール、他)、液体塞栓物質(アロンアルファーのような糊、無水アルコールなど)、固形物質(プラチナコイル、絹糸、など)があります.放射線治療の適応は原則的にありません.根治性も治療法や塞栓術の場合には使われる物質によってまちまちであり、再発もよく報告されています.再手術や変形のため切断を余儀なくされることもあります.形成外科的な再建術を必要とすることも多いです.

 

指の特殊性としては、その栄養血管が細く、側副路が豊富でないため、その動脈を損傷した場合に、栄養・血流不足から指に壊死が起こる場合があり、その場合は、部分的な切除や切断などの手段が必要になる場合があります.ただ、これは指の特殊性かもしれませんが、他の部位にある病変でも同じようなことが起こる可能性があるため、その血管構築に注意しながら治療を行うことには変わりありません.他の部位と異なり治療中に腕・足を加圧できるベルト等で駆血することにより、血流をコントロールしながら治療が出来るという特徴もあります.



治療の実際例

 

 

参考文献

 

Lu LI, Chen DJ, Chen HC, Coessens B: Arteriovenous malformation involving the thumb and hand: radical excision and reconstruction of multiple components. Ann Plast Surg. 2002 Oct;49(4):414-8

 

Moore JR, Weiland AJ: Embolotherapy in the treatment of congenital arteriovenous malformations of the hand: a case report. J Hand Surg [Am]. 1985 Jan;10:135-9

 

Lister G: The Hand: Diagnosis and Indications, Churchill Livingstone, Edinburgh, 1993, pp 441-449

 

 

2004.4.29記、2010.3.1追記 

 

Top Pageへ