足の外傷性動静脈瘻の治療

 
 

足の外傷性(外科的治療後の医原性)の動静脈瘻の治療例です.患者さんは、50歳台の方ですが、10歳台に足の良性腫瘍の摘出手術を受けられました.10年後の20歳台から、同部位の痛み、腫脹が始まり、その後30年間苦しんでおられました.あちこちの病院を廻られ、「治療は困難です」、「治療をしない方がいいです」などと言われ、半ば諦めておられました.そのため、もっぱら治療はペインクリニックで、痛みをとるのが中心でした.何年か前に、私の外来に来られ、血管撮影を御奨めしましたが、上記理由で、診断・治療を望まれませんでした.


最近になって、痛みがひどくなり、診断目的の血管撮影を受ける気持ちになり、来院されました.結果次第で、治療を受ける気持ちになられたようでした.診断の結果は、右足の動静脈瘻でした.図1、2、3(1が造影の早期、2がその少し後のタイミング、3がさらにその少し後).動静脈奇形と異なり、シャント部位の閉塞は技術的に困難でないため、治療を行なう事になりました.足の病変で、脳神経外科医が治療するわけですから、初めてである事は、了解済みで行ないました.親カテーテルを足の付け根からくるぶしの近くまで持って行き、そしてマイクロカテーテルを病変まで持って行きました.ここで、シャント部位を離脱式プラチナコイル(本来は、頭蓋内用のコイルでした)で閉塞を行ないました.図4.残存するシャントがありましたが、マイクロカテーテルをその部位まで持って行く事が出来ず、部分治療で終わりました.図5は治療終了時の撮影.図6は、コイルです.当然、外からは分かりません.


驚いた事に、30年間苦しんできた足の痛みも腫脹も翌日には消え、患者さんの言葉を借りると「信じられない事が起こった」でした.今では趣味の社交ダンスも出来るようになったという事です.まだ、シャントが一部残っているのですが、「足の状態はこれで十分です、もし悪くなれば、その時に残りの病変の治療を御願いします」と言われています.


最近のメールで、「足が新しくなったみたい」と言っておられます.また、御嫁入り前の御家族の写真も追加しました.「たび」ちゃんです.


2006.11.7記、2006.11.13追記


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