子供の脳血管解離による脳梗塞

解離性動脈瘤、または動脈解離は、大人では、頭蓋内の椎骨動脈と頭蓋外の内頸動脈で多く経験する.前者は、脳虚血またはくも膜下出血で、後者は脳虚血で発症する.同じ病態が子供でも同じ動脈や別の動脈で認められることがある.子供の脳梗塞の原因の一つとして、虚血発症の動脈解離が知られている.


小児の動脈解離120例の報告では、前方循環に解離が起こったのは73例(頭蓋外 29、頭蓋内 44)で、頭蓋内での解離の部位は、petrous ICA 0例, cavernous ICA 19例, MCA 15例, ACA 2例であった.また後方循環に解離が起こったのは47例(頭蓋外 37例、頭蓋内 10例)で、頭蓋内のV4 2例, basilar artery 6例, PCA 2例であった.


内頸動脈系の動脈解離


頭蓋内の内頸動脈に大きな外傷もなく、つまり、特に誘因もなく血管解離が起こり、脳梗塞や一過性脳虚血発作が起こることがある.軽い運動時に起こることもある.個人的な経験では全てteenagerの女性であった.内頸動脈の遠位部、特に後大脳動脈より遠位から始まり内頸動脈末端まで、または中大脳動脈まで波及することがある.もやもや病との鑑別が必要であるが、1) 両側病変ではない、2) 多くは一回限りのエピソードである、3) 短期間にTIAを繰り返すこともあるが、長期間TIAを繰り返すことはない、 4) 再発しない、などがあげられる.抗血小板薬などでしばらく経過をみることになるが、長期に投薬の必要はなく、予後は良好なことが多い.


椎骨・脳底動脈系の動脈解離


子供における椎骨・脳底動脈系の虚血の原因には、外傷性や非外傷性の動脈解離、外傷による穿通枝の虚血、偏頭痛などがあり、軽微な外傷や運動が引き金になって動脈解離が起こることもある.多くは虚血発症であり、くも膜下出血で発症することは多くはない.脳底動脈解離は、椎骨動脈解離が進展して起こる場合もあれば、脳底動脈に限局して起こる場合、さらには脳底動脈から後大脳動脈にまで解離が進展することまである.軽症例は保存的に治療され、重症例の治療は困難であることが多い.抗血小板薬や抗凝固療法があるが、虚血症例が出血に変化することがあることも知っておく必要がある.


参照: 脳幹部梗塞


臨床例


右内頸動脈の動脈解離: 16歳女性、自転車に乗っていて、突然、頭痛と左片麻痺が出現.3時間で、ほぼ神経症状は消失した.その後、6年間、症状の再発なし.現在は、投薬もなし.



 





 発症8日目のMRA

















発症40日目の脳血管撮影(右頸動脈撮影側面像)


















半年後の脳血管撮影(右頸動脈撮影側面像)

順行性の血流が増加している.











2007.11.6記


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