子供の脳底動脈狭窄・閉塞
子供の脳幹梗塞(動脈解離による脳底動脈閉塞)の椎骨動脈撮影の側面像
矢印は閉塞した脳底動脈
脳底動脈は、脳の中心を走る動脈で、脳幹・小脳・側頭葉や後頭葉に血液を送る重要な動脈です.成人では、動脈硬化により狭窄や閉塞が来て、脳梗塞を起こしたり、心臓や他の部位から血栓は飛んで来てこの動脈を閉塞する塞栓症が起ることがあります.また稀に、動脈解離を起こし、脳梗塞やくも膜下出血を起こすこともあります.
このような病態が,、大人だけでなく、子供でも認められることがあります.動脈硬化は通常、問題にはならないので、血栓を形成しやすい状態や心臓から飛んでくる塞栓症を別にすれば、やはり動脈解離が原因であることが多いと考えられます.軽い頭部外傷が原因のこともあり、このような誘因が全くない場合もあります.
脳底動脈に血管解離が起こり脳虚血が起った場合、その程度により、全く症状のない場合から重症の脳幹部梗塞を起こす場合まであります.解離による脳底動脈の順行性の血流がどれだけ減少するか、後交通動脈を介した頚動脈からの血流でどれだけ補填できるか、解離によって閉塞した小さな脳幹部に向う動脈の症状がどれだけ出るか、などによって、症状はまちまちです.脳幹の虚血だけでなく、後頭葉、側頭葉など大脳の虚血を起こすことがあり、大脳の局所症状やけいれんなどを起こすことがあります.
急性期を乗り越えた場合、解離がもとの正常血管に戻る場合もあれば、狭窄・閉塞もままの場合や動脈瘤の様に、進行性に拡張性の変化が来る場合もあります.
急性期の治療は、軽症であれば、投薬なしで経過を見るか、場合によっては、抗血小板薬が投与されます.後者の場合、大人では、非常に低い確率で出血性の変化が起こる可能性があり、脳神経外科医は投与をしたがりませんが、神経内科医は投与することがあります.子供の場合、症例自体少ないため、決った方針がないのが現状です.
重症の脳底動脈解離により虚血は、急性期に血管内治療(カテーテル治療)が有効の場合もあり、発症からできるだけ早期に、診断し、この治療を行います.
2010.9.15 記、2022.12.2 追記