Kasabach-Merritt 症候群の実際
カサバッハーメリット症候群の治療の実際例を、御両親の御了解を得て、紹介したいと思います.入院中は、結構、治療に難渋しましたが、4年経った今では、昔のことを忘れてしまうほど元気で、病変はほぼ跡形もなくなっています.3年目よりも、4年目では、さらに正常といっていいくらいになっていました.
カサバッハーメリット症候群を起こす腫瘍性病変は、病理学的には、自然に消退する良性の血管腫と異なり、kaposiform hemangioendotheliomaかtufted angiomaという良性と悪性の中間の腫瘍性病変といわれています.確かに、発症が、通常より遅かったり、その経時的な変化は、血管腫と大きく異なります.ただ、大変な時期を超えた症例は、ここで提示する患者さんのように、ほとんど分からないように小さくなって、消えていくようです.
血管内治療を生後4ヶ月の時点で、行っていますが、今ではカサバッハーメリット症候群に対しては、小児科の先生が中心に内科的治療を優先して行っています.
病変は、右上腕にありました .ステロイド治療を、初め行っていましたが、病変の腫脹、皮下出血、血小板減少(2万台)となり、血管内治療(粒子性塞栓物質の超選択的投与)を行いました.腫瘍濃染像が、消えているのが分かります.その後、ステロイド、インターフェロンの投与も継続して行い、約4ヶ月の入院治療を行いました.久しぶりに、外来に来られ、写真を撮りました.今では、年に一回、元気な顔を見せてもらっています.今年(2010年)も3年ぶりに来院されました.今は、立派な小学生です.病変であった右上腕のしこりのような感じもほぼ無くなり、正常な腕になっていました.もちろん、血液学的にも異常はありませんでした.
この患者さん以外に、大腿部に病変があった二人の女児の患者さんについてです.急性期には、患側の足を殆ほとんど動かさなかったので、歩く様になるのは無理ではないかと思っていました.治療は難渋し、時間がかかりましたが、急性期を脱し、元気になり、何年かたった今の段階では、歩行やかけっこも全く普通になっているのをみて驚きました.やや病変部の皮膚は薄く褐色がかっていて、固い感じがして、反対側よりも大腿部はやや細身ですが、それ以外は全く正常です.
以上のように、治療が大変で、その予後も必ずしも良好ではなかった、カサバッハーメリット症候群(カサバッハーメリット現象)ですが、2024年から認可されたシロリムスの投与が可能になり、その予後も大きく改善されました.このように、分子標的薬が今後も開発され、治療法が変わり、予後も改善されることは患者さんにとって、大きな福音になると思います.
2007.8.16記、2010.6.8、2010.7.29、2024.12.16 追記
治療前 上腕動脈撮影(治療前) 上腕動脈撮影(治療後)
1ヶ月後 3ヶ月後
3年後 4年後 7年後