HHTの診断の最初の一歩

遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT・オスラー病)が疑われたり、御家族・親族にHHTの患者さんがいる場合のスクリーニング検査


肺の動静脈瘻が先に見つかった場合などもオスラー病を強く疑って検査を進めるべきです.



本来は、遺伝性出血性毛細血管拡張症・HHTのことを理解した医師が診察・治療に当たるべきですが、現実は、大学病院の医師ですらあまり知識がないというか、関心がないのが現状です.



問診:


鼻血があるか?(鼻血の量は、まちまちです)

呼吸困難はあるか?(坂道・階段がきつくないか?).

  肺・脳・脊髄・消化管・肝臓などの動静脈ろう(シャント)の診断がされたことはないか?

慢性の貧血はないか? 

短時間、言葉が出なくなったり、半身の麻痺が出たことはないか?

親族にHHT患者さんはいるか?

  親族に高頻度の鼻血・脳膿瘍・肺出血・呼吸困難などの症状の人はいないか?

  若くしてなくなった方はいないか?


視診:口唇・舌・顔面の皮膚・体幹・指に毛細血管の拡張があるか?見慣れた医師ならすぐ分かります.


病院での検査:胸部X線撮影・肺から肝臓(腎臓のレベル)までの造影CT(3 mmスライス)、脳のMRIとMRA(MRによる脳血管撮影)のMR検査、できれば脊髄のMR検査、酸素飽和度測定(指のセンサーを30秒ほどつけるだけです.肺の他の病気がない場合、93%以下の飽和度であれば肺にシャントが必ずあります).これらは、すべて外来で可能な非侵襲的検査です.脳の微小銅静脈奇形 micro-AVMの検出には、造影の脳MRI検査が必要です.また肺の動静脈瘻のみの診断には造影のCT検査は不要です.しかし、肝臓の動静脈瘻の診断には造影のCT検査をした方が診断的価値が高いです.そのため、肺から肝臓まで一度に造影CT検査(できればdynamic study [短時間に肝臓を3回ほど検査します] を行い、肝臓内での血行動態の検査も行なう)を御奨めします.



最近は、脳の造影のMR検査(MR血管撮影を含む)と肺と肝臓の造影CT(肝臓のダイナミックCTを行なったあと、肺から腎臓までCT検査を行ないます)を行ないます.この造影CTでは、脊髄も検査内に含まれるため、脊髄の血管奇形も比較的大きな病変であれば、検出可能です.


以上が、私が行っている初期の診察・診断方法です.詳しく書けば、もっと詳しくなってしまいますが、多くの場合、問診、つまり話を聞いただけでHHTの患者さんかどうかは分かります.


問題なのは、何科を受診したらいいかです.システム的には、何科の医師でも頭のMR検査も胸腹部CTのオーダーは可能なはずです.近くの病院で御相談ください.


上記が、私が外来で行なっている検査です.


これに、オスラー病がかなり疑わしければ、遺伝子検査も説明し、その意義を納得されれば行ないます.臨床診断と遺伝子検査の結果の関連は、非常に強いのですが、遺伝子監査を行わない限り、HHTを完全に否定することは出来ません.遺伝子検査を行なっても約10%の臨床的にオスラー病の患者さんも遺伝子検査で、遺伝子変異が検出されません.


遺伝子検査を行なったからといって、治療方針が変わるわけではありませんが、親子で、遺伝子異常がはっきりしている場合、お子さんの兄妹で症状が無い場合、その遺伝子異常の部位だけ検査をすれば、その御兄弟がHHT遺伝子を持っているか、どうかははっきりします.


中枢神経系の血管奇形のスクリーニングに関しては、決ったものが無く、医療経済的に、コストがかかりすぎてするべきでは無いという意見から、出血などを起こすと、重篤な障害を残すので、是非、脊髄まで含めてスクリーニングをするべきという、意見もあります.また、大人に対しては消極的でも、6ヶ月を過ぎた乳児にはスクリーニングをするべきであるという意見もあります.この場合、脳だけではなく、脊髄の血管奇形のスクリーニングも含まれます.いつ頃、どのような検査を、脳だけ、脊髄までするかは、今のところ、主治医の考え方に任されると思います.


最近は、親御さんのどちらかがオスラー病と確定し、遺伝子診断をされている場合、生まれて来たお子さんの遺伝子検査を早期に行ない(数mlの採血だけです)、それで親御さんと同じ遺伝子変異が見つかれば(50%の確率)、早期に脳、脊髄、肺、肝臓の検査を行なおうと思っています.


患者さんの側からこれこれの検査をしてくれとは、言い難いものです.近くの病院での検査の依頼文を用意しました.のところにチェックを入れれください.

       →  screening.pdf


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肺の動静脈瘻のスクリーニング:造影超音波検査



2007.9.28記、2008.7.16、2009.2.16、2010.8.3、2010.10.20、2011, 2 10、2012.12.4 、2013.2.1、2014.8.15、2016.12.2 追記