ガレン大静脈瘤と自然血栓性閉塞

ガレン大静脈瘤の静脈瘤部分に進行性の血栓化が進むことは、過去にいくつかの症例報告がありよく知られています.しかし動静脈シャントが自然消失し、ガレン部の拡張も消失することは稀とされています.ガレン大静脈瘤やその血栓化の診断には、単純CTや造影CT、CT angiography、MR検査(MRIとMR angiography)が有用とされています.脳実質の状態や水頭症以外に、ガレン大静脈瘤の血管構築、残存するシャント血流や血栓化部分が描出されます.血栓は層状構造をしていることが多く、外側が古い血栓で、血流のある内側が新鮮な血栓のことが多いとされます.またCTで石灰化が外壁に認められることが多いですが、これは血栓化の進行や予後の予測には役立ちません.血栓を直接観察するという観点と被曝という観点からはMR検査の方が優れています.ガレン大静脈瘤にはchoroidal typeとmural typeがあり、前者がより原始的な血管構築をしており、シャント血流が多いため、mural typeの方が血栓化を起こしやすいとも考えられますが、血栓化に関しては、実際にはそうでもありません.結局、多数の因子が絡み血栓化が起こるのだと推測されています.同様に性別や年齢も関係はなさそうで、過去の報告では、胎生21週から40歳までの患者さんが報告され、男女比も1:1 でした.(ガレン大静脈瘤自身は、男性の方が多いです).


ガレン大静脈瘤の自然血栓化・閉塞に伴う症状には、無症状、痙攣、意識障害、脳出血、水頭症などがあり、その予後は、無症状(良好)から死亡例まで報告されています.血栓化・自然閉塞のメカニズムはよく分かっていませんが、シャント量が少ないこと(短絡血流が少ないこと)、十分な流出路がないこと、などが推測されています.通常、シャント量が少ない症例が多いことから、自然閉塞の多くの場合、臨床的に不良な経過を辿ることは少なく、過去の報告ではその予後は全体では約70%の患者さんの予後は良好であったと報告されています.部分的な血栓性閉塞がある場合、残存する動静脈シャントに対して、無症状の場合には、当初、定期的な超音波検査(新生児の場合)やMR検査(新生児以降)が勧められます.しかし、1−2歳になった時点で、動静脈シャントが残存することによる発達遅延、痙攣、脳出血や静脈性梗塞を危惧し、治療適応があれば、血管内治療が行われることもあります.



ガレン大静脈瘤



参考文献


Whitaker JB, Latack JT, Venes JL: Spontaneous thrombosis of a vein of Galen aneurysm. AJNR 8:1134-1136, 1987


Mofttakhar P, Danielpour M, Maya M, et al: Spontaneous thrombosis of neonatal vein of Galen malformation. Neurosurg Focus 27:E12, 2009


Mahmoodi R, Habibi Z, Heidari V, et al: Spontaneous regression and complete disappearance of the vein of Galen aneurysmal malformation. Childs Nerv Syst 32:593-598, 2016


2018.4.22 記載


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