頭・頚部の血管腫・血管奇形の予後

血管腫は、診断が正しければ、自然と(治療なしで)、時間とともに原則として消失していきます.5−8歳ごろまでにほとんど分からなくなるか、または瘢痕が少し残る程度まで小さくなります.従って、治療方針は、wait and seeつまり経過観察です.早期にレーザー治療を行ったほうが良いと言う立場をとる医師もいますが、必ずしも支持された意見ではありません.大きな病変で、表面しか到達しないレーザー治療がどこまで効果があるか慎重に判断する必要があります.病院の収益目的で、レーザー治療を勧める場合もあり、主治医によく考えを聞いてください.当然、10歳以降で、血管腫と診断されている患者さんの診断は、違っていることが多いのも事実です.

 

ポートワイン ステイン(Port Wine Stain)は、血管腫ではなく、血管奇形の一種です.毛細血管または細静脈レベルでの血管奇形で、こちらは、レーザー治療が効果的であることが多いとされます.また、ほって置いても消えることはありません.問題は、このポートワイン ステインを血管腫と説明する医師がいることです.これは、間違いです.

 

また、血管奇形は、大きな分類であり、その成分は、静脈、リンパ管、毛細血管、さらに動脈(動静脈短絡・動静脈ろう)があります.動静脈奇形の治療は簡単ではありませんが、必ずしも悪化の一途をたどると言うわけではありません.昔、動静脈奇形をステージで分類していたこともあるようですが、今の時代このような分類は使いません.基本的には、外見所見で分けるステージ分類は使わず、血管構築(血管撮影で得られる情報)を基に治療方針をたてます.治療が困難な病変も多く、このような場合には、「一生、病変とうまく付き合っていく必要がありますよ」と私は、患者さんに説明しています.

 

参考図書

小宮山雅樹:神経脈管学、メディカ出版、大阪、2012

 

2004.8.17記 


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