小顎症、Robin症候群と脳血管奇形
Pierre Robinが、1923年に報告したPierre Robin syndrome, Robin sequenceは、それより100年以上前からよく知られた病態でした.
小顎症 micrognathia、舌下垂 glossoptosis、その結果の気道閉塞が、三徴とされています.脳血管奇形との合併は、ほとんど知られていません.または報告はありませんが、種々の疾患・症候群(論文1のTable 1を参照, SS: Stickler syndromeの略)に合併することが知られています.対称性の小顎症と舌下垂以外に、 口蓋裂の合併が高頻度(-90%)にあります.この口蓋裂は、U字型やV字型をしています.Pierre Robin syndromeの定義もいろいろありますがその頻度は、8,500-20,000出産に一人ぐらいとされています.
臨床的な問題点・症状は、上気道閉塞 upper airway obstructionと食事・栄養困難 feeding difficultiesです.気道閉塞は多くの場合、舌下垂による舌根部の気道閉塞によるとされています.気道閉塞は、下顎の成長や舌下垂の軽快により、時間とともに軽快することも多いです.
治療を考えるにあたり、どの部位で閉塞が起こっているか、調べる必要があります.これには喉頭鏡・気管支鏡による検査がもっとも有効です.
非手術的な治療 – うつ伏せ姿勢 prone position、下顎と舌が前方に落ちるため、舌根部での気道閉塞が軽減します.まず、この治療により半数近い子供の症状が軽快します.
次に.鼻咽頭のairwayの挿入 nasopharyngeal airway (NPA)があり、その先端部を舌下垂部を超えた口腔咽頭の遠位まで持っていきます.またNPAの固定にも気をつける必要があります.以上の方法で、多くの子供は、気道閉塞の解除、正常酸素化、体重増加が得られます.
外科的治療 – 舌・口唇縫合 tongue-lip adhesion(TLA). 舌固定術glossopexyも舌根部の閉塞に有効です.前・腹側の舌を下口唇に固定し、後舌を下顎に固定します.次に下顎骨延長術 mandibular distraction osteogenesisがあります.これは緩徐に下顎の長さを延長することにより咽頭の気道を大きくします.これには、外延長法と内延長法があります.気道閉塞に対する最終的な・確実な治療は気管切開 tracheostomyになります.慢性的に人工呼吸器が必要とする子供の場合には、気管切開はどうしても必要になります.
参考文献
1.Evans KN, et al: Robin sequence: from diagnosis to development of an effective management plan. Pediatrics 127:936-948, 2011
2015.8.21 記載