先天性脳血管奇形って、いつ起こるの?


 

先天性脳血管奇形という場合、「先天性」とはどういう意味でしょうか?

恐らく生まれたときにすでに血管病変があるということでしょう.

 

医師を含め、多くの人は、脳血管奇形は、先天性病変と思い込んでいます.脳動静脈奇形はその代表的疾患ですが、生まれて、すぐに症状を出すことは殆どありません.さらに、生まれた時には、脳動静脈奇形はなく、生後、成長とともに病変が現れると考えるグループもあります.実際、脳動静脈奇形が、出血で症状を出すのはティーンエイジに最も多いのも事実です.

 

ガレン大静脈瘤と脳硬膜静脈洞は、出生前に胎児エコーで診断がされる場合があります.脳動静脈奇形が出生前に診断されることはありません.「先天性」が生まれたときにあると言う意味であれば、出生前に認められる病変は、何と呼ぶべきなのでしょうか.このような血管病変を考えるときに、出生という時点を、基準に考えること自身、あまり意味がないかもしれません.今では、先天性脳血管奇形という言葉自身、あまり意味をなさなくなって来ました.

 

ガレン大静脈瘤と脳硬膜静脈洞は、ともに早ければ妊娠の24週の頃に診断可能です.この頃に、エコーで認められるということは、それよりも前に病変が形成されるということになります.恐らく妊娠早期の脳血管の形成期に、特に静脈系の形成時期に何らかの問題が起こり、ガレン大静脈瘤や脳硬膜静脈洞が形成されると考えられるのでしょう.

 

多くの脳動静脈シャントが、妊娠の中期から後期の形成されると考えられています.Ballesterらは、ガレン大静脈瘤の最も早期の超音波検査を報告しています.妊娠25週で発見されましたが、重症の心不全の進行で妊娠28週で、子宮内で死亡しました.Ximenesらも妊娠16週の超音波検査で、正常とされた胎児が、25週にガレン大静脈瘤を診断され、34週に心不全が診断され、35-6週に出産しましたが、腎不全で24時間以内に死亡しました.Ordoricaらは、27週でガレン大静脈瘤と診断された胎児が、33週で心不全が悪化し、帝王摂関で出産しましたが、出産後すぐに死亡しました.Worswickらの症例は、妊娠18週のエコーは正常でしたが、29週にガレン大静脈瘤の診断がなされた時は、心不全の徴候はなかったですが、35-6週には、心不全が進行したとしています.

 

参考文献

 

Komiyama M, et al: Serial Antenatal Sonographic Observation of Cerebral Dural Sinus Malformation

AJNR Am. J. Neuroradiol., Sep 2004; 25: 1446 - 1448.

Abstract: Dural sinus malformation is an extremely rare congenital cerebrovascular malformation. We report serial antenatal sonographic findings in two patients with dural sinus malformation. Sonography can reveal dural sinus malformation at 24 weeks' gestation. Correct and early diagnosis may help determine the appropriate place, timing, and mode of delivery, which may result in a better therapeutic course and patient outcome.

 

2005.1.12記、2006.5.28追記


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