無脳症 anencephaly
無脳症 anencephaly
無脳症は神経管の重度の形成不全であり、脳や頭蓋の奇形が伴います.大脳や小脳が欠損したり、小さかったりします.無脳症は、神経管欠損neural tube defectの一連疾患として扱われます.
無脳症は、遺伝的要因や環境要因が関係していると考えられていますが、詳細は分かっていません.妊娠初期の超音波検査で検出されたり、母体の血清 alpha-fetoproteinの上昇で疑われます(欠損部を皮膚がカバーしていない場合).葉酸 folic acidがその予防に有効とされており、無脳症や他の神経管欠損症の危険性を2/3に下げるとされています.
無脳症の原因は不明ですが、葉酸代謝に関連のある遺伝子の関連が分かって来ています.Methylenetetrahydrofolate reductase (MTHFR)やVANGL1がそれに該当します.
他の因子として、母親の肥満、糖尿病(type 1)、妊娠初期の発熱 hyperthermia、ヒ素中毒、抗けいれん薬(valproic acidなど)なども指摘されています.
無脳症は、単独の脳奇形であることが多く、他の合併奇形を伴うことは多くはありません.妊娠損失 pregnancy loss、流産、死産、人工流産に終わることが多いですが、いずれにせよ重症の脳奇形であるため生存を続けることは困難です.
無脳症の患児は致死的であるため、助けることはできませんが、母親や家族への精神的なサポートやカウンセリングは非常に重要です.特に、出生まで無脳症の診断がなされていなかった場合や診断されても時間が経っていない場合はなおさらです.
神経管欠損症が再発する可能性は2−4%とされ、その予防が必要です.通常、妊娠可能な年齢の女性の場合、既往症に関わらず 0.4 mg・日の葉酸投与が勧められており、この量は、多くのビタミン製剤に含まれる量です.しかし、神経管欠損症の既往のある場合は、その10倍の葉酸の投与、つまり4 mg・日の投与が妊娠の3ヶ月前から勧められており、この量は、通常の食事からの摂取では足りません.これにより、初回の神経管欠損症やその再発を2/3に減少できるとされています.
市販の葉酸サプリメントは、何種類かあり、1錠 100-400 mcgつまり、0.1-0.4 mgの葉酸が含まれています.上記の0.4 mgを毎日摂取するためには、何 mgが1錠に含まれており、何錠飲む様になっているかの確認が必要です.また、既往に神経管欠損症がある方は、その10倍の量を毎日飲むことが勧められていますので、容量に注意が必要です.葉酸を摂取しすぎても、排泄されるため安全です.
葉酸サプリメント 単位 1 mg = 1000 mcg
2009.12.22記