こどもの脳梗塞 M君の場合


小児の脳梗塞は、頻度は高くないですが、時々経験します.詳しく調べても、原因が、はっきりしないこともあります.ここでは、関東にお住まいのM君の場合を、御紹介します.御両親の了解も得ています.子供さんの脳梗塞では、長期に経過を見たような報告は少なく、M君は、5年半の経過を見ています.


M君は4歳の男の子でした.夏の暑い日に、突然の下肢の麻痺としびれが2回出現しましたが、一旦、軽快しました.しかし、4日後に、今度は、左半身の麻痺と知覚異常が出現し、治りませんでした.最初の病院では、「精神的なもの」と言われましたが、お母様は、そんなわけが無いと、次の病院に行かれ、そこでの診断は、脳梗塞でした.そのMR検査の結果が画像 Aです.内包後脚と視床外側部に急性期の梗塞(白い部分)がありました.MRA(画像 B)ではここを栄養する右の後大脳動脈の写りが悪く(矢印より末梢)、何らかの原因でこの血管が詰まったようでした.抗血小板薬と脳保護薬の点滴を2週間して、麻痺も随分改善しました.その頃に撮ったMR検査で、詰まっていた後大脳動脈の写りが少し改善していました(画像 C、矢印はBと同じ場所を指しています).しばらく、外来で抗血小板薬の内服が’続きましたが、麻痺もなくなり元気にもとの生活に戻りました.1年後のMR検査(画像 D)では、さらに後大脳動脈の写りが良くなっていましたが、僅かな狭窄性変化は残っていました.発症から5年半を経過し、再発もなく、僅かな左半身の感覚異常がありますが、まったく元気で学校に行っています.久しぶりに、外来で元気なM君に会いました.


外傷や先行するの感染症もなく、心臓にも問題なく、血液学的にも異常がなく、何が原因か分かりませんでした.当初、塞栓性の閉塞も考えましたが、血管解離(動脈解離)が最も考えられるのではないかと、今では思っています.外傷が原因で無い血管解離もあります.



     
    


              A: 発症時のMRI                                                 B: 発症時のMRA


            
      



              C: 発症一ヶ月時のMRI                                               D: 1年後ののMRA



2011.2.25 記載


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