小児の脳動脈瘤の最初の報告は、1871年にEppinger Hが報告したとされ、その症例は15歳の男児で、大動脈の狭窄症例に、前大脳動脈瘤の破裂によるくも膜下出血で3日後に死亡している.その後症例報告が続くが、1939年にはじめてMcDonaldとKorbが61例という多数例の剖検例を報告している.
英語文献の検索で小児の脳動脈瘤は、1939-2005年の間に706個の報告があり、男女比は、1.8:1と男児に多く、80%の患児においてくも膜下出血で発症している.発症時の神経学的良好な患児は、49%であり、逆に不良な患児は36%であった.動脈瘤の部位では、内頸動脈先端部が26%で最も多く、次いで、前交通動脈が19%、そして中大脳動脈が17%であり、後方循環が17%であった.20%が巨大動脈瘤であり、79%で外科的治療は施行され、予後良好は60%であり、28%が死亡であった.
小児の脳動脈瘤の頻度は低く、全体の中では0.5-4.6%程度とされる.John Hopkins Medical Institutionsでの頻度は、1.4%であり、Mayo Clinicでは、1.7%であり、大人も含め多数の動脈瘤の治療を行う施設では、1-2%程度の頻度と考えられる.5歳以下の動脈瘤はさらに頻度が低くなり、Ostergaradの報告では7%のみが5歳以下であった.性別では、男児に多く(1.8/1)、これは小児の脳動脈瘤は先天的な要素が男児でより強く、環境・後天的要素は女児により強く働くとも推測される.動脈瘤の発生部位では内頚動脈の末端が26%多く、大人では同部位は4.5%であることを考えるとかなり違いがある.後方循環の動脈瘤は17%で、この部位の大人が8%であるので、かなり頻度が高いことには間違いなく、両側の椎骨動脈系を精査する必要性は明らかである.基礎疾患がある場合が多く、感染性動脈瘤が2%程度あり、また外傷性動脈瘤もあり、病歴の聴取が重要である.外傷性動脈瘤は、末梢性の動脈瘤が多いことも特徴である.細菌性心内膜炎、敗血症、HIV感染、多発性嚢胞腎 polycystic kidney、大動脈縮窄症、鎌状赤血球症、type IV Ehlers-Danlos症候群、type IVコラーゲン症.Peudoxanthoma elasticumなどの基礎疾患と動脈瘤の合併の報告がある.実際には巨大動脈瘤が多いかどうか、後方循環が多いかどうかは、種々の報告があり議論のあるところである.また、くも膜下出血で発症した破裂脳動脈瘤であっても遅発性の脳虚血を起こす血管攣縮が問題になることは多くはない.
治療に関しては、基礎疾患を考慮しながら、大人の場合と同様にクリッピングや塞栓術など、個々の症例に適した方法が選択される.
参考文献
Huang J, McGirt MJ, Gailloud P, et al: Intracranial aneurysms in the pediatric population: case reports and literature review. Surg Neurol 63:424-433, 2005
2007.7.8 記
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