ミラー症候群、Mirror Syndrome
動静脈シャントを胎児が持つ場合でも、多くの場合、母親にその影響が出ることはありません.しかし、稀に影響が出て、全身の浮腫が出現することがあります.胎児と母親に同じような症状が出るためmirror 症候群と呼ばれます.
Mirror syndome (Ballantyne syndromeとも言われます)は、1892年に John W. Ballantyneが初めて報告したとされます.胎児水腫fetal hydropsに関連し、母体に浮腫が起ることをされ、その原因は良く分かってません.triple edema (maternal, fetal, placental)ともいわれ、母体、胎児、胎盤に浮腫が来るのが特徴です.1956年から2009年までの間に56例の報告があり、その原因はRh同種免疫 rhesus isoimmunization (28.6%)、多胎妊娠 (17.9%)、ウイルス感染 (6.1%)、胎児の奇形、胎児腫瘍、胎盤腫瘍(37.5%)でした [Braun 2010].母体の症状は、16-34週に出現し、その症状は、体重増加と浮腫(89.3%)、血圧上昇(60.7%)、軽度の貧血と血液希釈 hemodilution(46.4%)、アルブミン尿と蛋白尿(42.9%)、尿酸・クレアチニンの上昇(25%)、頭痛・視覚異常(14.3%)が挙げられます.胎児の子宮内死亡や流産は35.7%におよびますが、出産・死産後の8.9日で母体の症状は消失しています.Mirror syndromeとpreeclampsiaとの鑑別は前者の頻度が低いために容易ではありません.Mirror syndromeでは、血液希釈 hemodilutionやhematocritの低下が認められることが多いですが、preeclampsiaでは、hemoconcentrationが多いとされます.しかし、両者で高血圧が認められるため、その鑑別が難しいです.
脳血管奇形の合併は、vein of Galen aneurysmal malformationの1例のみで、27週で、胎児水腫、vein of Galen aneurysmal malformation、羊水過多の診断され、33週で腹水、心拡大、胎盤浮腫が認められています [Ordorica 1990].その母体のmirror syndromeの出現は、30週で、浮腫、軽度の蛋白尿、肺水腫、それに腎不全、高血圧が続いて出現しています.34週に帝王切開で出生し、直後に心不全で死亡しています.この5日後の母体の症状は消失しました.
Ordorica SA, Marks F, Frieden FJ, et al: Aneurysm of the vein of Galen: a new cause for Ballantyne syndrome. Am J Obstet Gynecol 162:1166-1167, 1990
Braun T, Brauer M, Fuchs I, et al: Mirror syndrome: a systemic review of fetal associated conditions, maternal presentation and perinatal outcome. Fetal Diagn Ther 27:191-203, 2010
2012.4.23記載