けいれん重積

けいれんが続いている状態を、けいれん重積 status epilepticus といいます.また短時間に繰り返し痙攣発作が起る場合もいいます.一般的には、30分以上けいれんが、持続した状態をさします.今では、10分も続けば、重積と言うそうです.


その原因は、多数あり、ここでは、詳しくは述べませんが、抗てんかん薬の飲み忘れ、脳炎、髄膜炎、脳梗塞、脳出血、脳腫瘍、脳膿瘍、脳血管奇形、頭部外傷、腸炎など、様々です.


けいれん重積の原因が明らかな場合もありますが、明らかでない場合は、けいれん重積の治療と並行して診断を進める必要があります.最低限CTは必要で、さらにMRI/MRAも必要な場合も少なくありません.


初期治療として、気道確保や酸素投与が行なわれると同時に、静脈ルートから薬物治療が行われます.


まず、ジアゼパム(DZP, 商品名 セルシン、ホリゾン)など、即効性の抗けいれん薬の投与を行ない、それでもコントロールが困難な場合には、次の薬物が考慮されます.


ここで、問題なのは、どうしても発作が止まらない場合です.その場合、一種の冬眠療法のような全身麻酔をかけて、人工呼吸器にのせて、治療を行います.脳波をモニターしながら、きちんとけいれんが、押さえられていることの確認が必要です.筋弛緩薬を投与すると、実際、薬が効いているか、足りないかの判断が難しくなります.


ミドゾラム(MDZ, 商品名 ドルミカム)の緩徐な静脈注射も行なわれ、呼吸抑制が強くないので、使われることも多いです.この薬剤の持続投与が行なわれることがありますが、一見痙攣は止まっているが、脳波では、異常波が出続けることがあり、この静脈注射では、重篤な脳障害につながります.つまり、脳の保護作用はなく、痙攣を止めるだけに、有効です.


また、同様に、患者さんを脳の保護作用の強くない静脈麻酔をしながら、筋弛緩薬などで 動かない様にしただけでは、外見からは、患者さんは動かないので、けいれん発作は、止まって見えますが、脳の中では、けいれん発作が持続していることがあり、このような状態が、半日でも続くと、大きな脳障害を残し、麻酔から醒ましてみると、すでに両側の大脳の障害が、不可逆的に起ってしまっていることがあります.


このことは、必ずしも、けいれん発作を治療する医師が知っているとは限らず、けいれんは止まったのに、何故か大きな脳障害が起こり、原疾患のせいにされることも、しばしばです.


けいれん重積になれば、集中治療室ICUなどでの管理が必要で、集中治療医と相談しながら治療を行います.急性期が過ぎれば、原疾患の治療と内服の抗てんかん薬の投与が行なわれます.




2011.2.1 記、2012.2.19、2022.12.2 追記


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