静脈石
矢印が静脈性血管奇形内の静脈石
静脈性血管奇形で、病変内に、硬い石を何個か触れる事があります.
経時的に見ていると数が増える事があります.
これは、いったい何が起こっているのでしょうか?
静脈性血管奇形の中には、その局所で凝固系の異常があることがあります.血管の内膜が正常でないのが原因であったり、静脈血の停滞があるのが原因あったりして、病変での局所凝固系、場合によっては全身の凝固系の異常が起こります.
その結果、フィブリンや小さな血栓が形成されます.それらが、石灰化した血栓、つまり静脈石 phlebolithsを形成します.この静脈石の診断的な価値は高く、これを見るだけで、静脈性血管奇形と診断が可能です.逆に、これ以上、カテーテル検査のような侵襲的な検査は、不要ということになります.
血栓が形成されるときにさまざまな凝固因子が消費されます.例えば、凝固因子のI, V, VIII, antithrombin III, XIIIなどです.そして、反応性に血栓の溶解が起こり、逆に出血のリスクが上がるわけです.血小板の減少も起こりますが、カサバッハ・メリット症候群で起こる程度まで下がる事はありません.
静脈性血管奇形での局所凝固異常は、カサバッハ・メリット症候と異なり、一生継続します.この区別は重要で、一部の論文などでは、混乱して報告がされています.
2005 1 10記、2019.7.3 追記