Hemihypertrophy  半身肥大症

このhemihypertrophyは、Millerらが、初めて1964年に報告したとされます.身体の左右の大きさが異なる場合で、一側の上下肢、上肢だけ、下肢だけ(segmental)、場合によっては上肢と反対側の下肢(crossed)の肥大のこともあります.四肢の筋肉、骨、軟部組織の肥大だけの場合もあれば、同じ側の内蔵の肥大や頭部・顔面の肥大も伴う場合もあります.一肢のみの時は、Klippel-Trenaunay syndromeなどとの鑑別は難しいですが(しかし、鑑別は重要です)、基本は、半身のovergrowthである点を考慮し、診断を行います.


これらは、細胞自身が肥大する場合(hypertrophy)と細胞の数が増える場合があります(hyperplasia).これらの原因は分かっていませんが、正常の細胞の成長や左右対称の成長をコントロールするをメカニズム異常が起こると考えられます.


生まれてすぐに分かることはなく、成長とともに半身肥大が明瞭になる場合があります.しかし、境界型もあり、その診断に苦慮する場合もあります.


症候性 syndromicに起こる半身肥大症とそうではない非症候性 non-syndromicの半身肥大症は予後や治療方針が異なるため、区別して考えるべきです.


非症候性の半身肥大症には、泌尿器・生殖器の先天異常の合併がしばしば認められます.これには、ソケイヘルニア、腎嚢胞、馬蹄腎、停留睾丸 cryptorchidismなどがあります.


合併する、内蔵の悪性腫瘍、特に腎腫瘍(Wilms tumorが多い)、副腎腫瘍、肝腫瘍 hepatoblastomaが知られています.そのスクリーニングは重要です.


Klipper-Trenaunay syndromeには、基本的に腎臓腫瘍は合併しません.


鑑別診断に、Klippel-Trenaunay syndrome,  Parkes Weber syndrome, neurofibromatosis、Proteus syndrome、Beckwith-Wiedemann syndrome(出生前後の過成長 prenatal / postnatal overgrowth、新生児期の低血糖 neonatal hypoglycemia、巨大舌 macroglossia、内臓肥大 visceromegaly、半身肥大、臍帯ヘルニア omphalocele、腹壁前壁の欠損 anterior abdominal wall defects、Wilms 腫瘍に代表される悪性腫瘍、第11染色体 11p15の異常 alterations in imprinting and methylation on 11p15 が知られている)などがあります.


腹部の悪性腫瘍のスクリーニング、特に腎臓腫瘍 Wilms tumorの重要性も強調されています.半身肥大の子供さんは、3-6ヶ月毎に超音波検査を行うべきであるとされています.5歳まではこの間隔で検査が必要ですが、その後に関してはあまり決まりがありません.超音波検査は、被曝がなく、鎮静なしで行なえる利点があります.しかし、何歳までこれを継続するべきかは、決まっていません.


参考文献


Miller RW, Fraumeni JF, Manning MD: Association of Wilm’s tumor with aniridia, hemihypertrophy and other congenital malformations. N Engl J Med 270:922-927, 1964


Ballock RT, Wiesner GL, Myers MT, Thompson GH: Current concepts review ? Hemihypertrophy ? Concepts and controversies. J Bone Joint Surg 79-A:1731-1738, 1997


Kundu RV, Frieden IJ: Presence of vascular anomalies with congenital hemihypertrophy and Wilms tumor: an evidence-based evaluation. Pediatr Dermatol 20:199-206, 2003



2009.9.14記載、2014.9.30、2018.1.30 追記


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