肺動静脈瘻治療の説明書
肺動静脈瘻治療の説明書
HHTの患者さんを多く診るようになり肺の動静脈瘻を治療することが増えてきました.当院での肺の動静脈瘻の治療の説明書を以下に載せます.
肺の動静脈瘻の治療についての説明書
患者氏名: 平成 年 月 日
以下の説明をしました.
大阪市立総合医療センター
小宮山雅樹
肺の動静脈瘻は、脳梗塞、脳膿瘍、他の部位への塞栓症、呼吸不全、肺出血(胸腔内出血)などの原因になることがあります.
治療の方法は、外科的切除術とカテーテルを介した塞栓術があり、内科的な治療(脳塞栓予防の抗凝固療法)はあまり行われません.
外科的摘出術では、病変を含めた肺をくさび状に部分切除が行われます.侵襲が大きく、傷が残りますが、シャントの量が非常に大きい場合や病変が一カ所の場合は、この治療法を選択することがあります.
カテーテルを介した塞栓術は、病変部をコイルで閉塞します.病変が多発性で、左右にある場合も、治療可能で、侵襲も小さいですが、病変が残存することもあります.また後で述べる合併症が起こることがあります.現在では、通常、カテーテルで治療可能な病変は、まずこの方法で治療されることが多いです.
治療は通常、局所麻酔下で行われますが、子供さんの場合は全身麻酔下で行われます.足の付け根を走行する大腿静脈からカテーテルによる治療が行われます.このカテーテルを、大腿静脈、下大静脈、右心房、右心室、主肺動脈と通していきますが、もちろん痛みはありませんし、通っていることも分かりません.傷は約1-2mm付くことがありますが、殆ど分かりません.このカテーテルの中に、もう一本、子供カテーテルを通し、さらにその中にマイクロカテーテルを通して治療を行います.塞栓術に使われるコイルは通常、マイクロカテーテルを介して病変で離脱します.つまり、ここに置いていい(切り離していい)と判断されれば離脱し、不適切であれば、離脱せずに回収します.コイルは、プラチナ性で、長さは、1 cm から 30 cmまであり、コイル径(ループを作っているループの径)も、2 mmから20 mmまであり、病変の大きさや血流の多さなどから判断して決めます.一カ所の病変に、通常何本ものコイルが使用されます.
動静脈瘻が、動脈から直接、静脈につながっている場合(単純型といいます)は、一部静脈側も含めて塞栓すると完全に病変は閉塞されます.しかし、動静脈瘻の構造が、動脈と静脈の間に、異常血管網がある場合(複雑型といいます)には、この異常血管網の手前の動脈をコイルで閉塞することになるため、動静脈瘻そのものは、残存することになります.この場合でも、短絡血流は減少し、その結果、塞栓症の可能性は小さくなり、呼吸不全は改善します.
カテーテルを介した塞栓術での可能性のある合併症は、脳梗塞、脳膿瘍、肺出血、コイル・トラブル(コイルが静脈側に移動してしまう:コイルが壊れて、抜けなくなり、体内に残す必要がある、など)、感染、局所の出血、他にもいろんな可能性があり、確率は低いですが、場合によっては、命に関わることがあります.術中は、塞栓性の合併症を防ぐ目的で、抗凝固薬を全身に使います.
多発性の病変の場合には、一度にできるだけ多くの病変を治療したいのですが、一カ所の治療に時間がかかる場合や造影剤の量が多くなった場合などは、複数回に分けた治療が必要になることがあります.また、病変が一カ所でも、複雑な構造で、これも複数回に分けた治療になることがあります.
当院では、脳血管内治療医(小宮山)が中心になって、塞栓術を行いますが、循環器内科医、放射線科医、小児循環器内科医などとも連絡を取りながら、協力して治療に当たっています.
以上、肺の動静脈瘻の説明ですが、不明の点は遠慮なく、再度の説明をお申し出ください.
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肺の動静脈瘻の治療の説明を受けました.その内容について以下のようにしたいと思います.
□ 上記の説明を納得しました.治療を受けたいと思います.
□ 上記の説明を受けましたが、治療は受けないことにします.
□ 上記の説明に、よく分からない点があるので、もう一度説明を受けたいです.
□上記の説明に、よく分からない点があるので、もう一度、別の医師による説明を受けたいです.
□セカンドオピニオンとして、別の施設の医師による説明を受けたいです.従って、同意は保留します.
□ にチェックをしてください.
日時: 平成 年 月 日
患者氏名 .................................. 印
立ち会い者 ................................ 印
2007.8.30 記