Maffucci Syndrome
Maffucci syndrome、マフッチ症候群
多発性の血管性腫瘍 angiomaを伴う内軟骨種はMaffucci syndromeと呼ばれ、その名の通りイタリア人の病理学者のAngelo Maria Maffucciにより1881年に報告されました(Di un caso encondroma ed angioma multiplo).この症候群は、稀な遺伝疾患であり、性差はなく、人種の差もないとされます.過去に約160例の報告があります.原因は不明とされ、遺伝形式も分かっていません.通常4-5歳で症状を呈するようになります.その特徴は、軟骨の良性の拡大(内軟骨腫 enchondroma)、骨の変形、暗赤色の不整形の血管性腫瘍であり、中胚葉性組織の形成異常と考えられています.知的・精神的な発達は正常です.
Maffucci syndromeは皮膚と骨格に異常を来します.通常、四肢末端の静脈性血管奇形 venous malformationは表在性・深在性ともにあり、また左右非対称性にに認められます.この静脈性血管奇形は、血管腫と呼ばれることもありますが、正しくは静脈性血管奇形です.内軟骨腫は、通常、指の骨や長骨に認められます.しかし、この静脈性血管奇形や内軟骨腫は身体のどこに現れてもおかしくありません.リンパ性血管奇形 lymphatic malformationの合併も稀に認められます.骨病変も左右対称ではなく、また骨折を起こします.多発性の場合 enchondromatosisと呼ばれます.約30%の内軟骨腫は悪性化し、軟骨肉腫 chondrosarcomaになります.Maffucci syndromeの静脈性血管奇形は、通常の静脈性血管奇形と同様に暗青色を呈し、圧迫で容易に小さくなり、無症状です.血栓形成や静脈石の形成も見られます.骨の成長とともに、軟骨の成長が不整なため特徴的な骨の変形(長骨の短さ、足の長さの左右差、病的骨折、その変形治癒)を来します.血管撮影では、静脈性血管奇形は写りませんが(avascular mass)、内軟骨腫は強い腫瘍陰影を呈します.
Maffucci syndromeは四肢末梢に青色の病変で気づかれます.内軟骨腫の悪性化が30%の患者さんに平均40歳の頃に認められます.生まれた時は正常ですが、通常4-5歳で症状を呈するようになり、皮膚・骨病変は10歳代までゆっくり進行し、10−20歳代でその進行は止まります.内軟骨腫の悪性化さえなければ、その予後は良いとされます.身長は低いことが多く、手足の長さに左右差が認められます.内軟骨腫の90%は手に起こり、他に足、大腿、下腿、肋骨、頭蓋骨などにも起こります.骨折がさらに種々の合併症を起こすことがあります.
カポジ肉腫、Klippel-Trenauney症候群, Proteus症候群などとの鑑別が必要です.この疾患を扱う上で、内軟骨腫の悪性化の検出が最も重要です.
病変を疑えば、X-線検査を行ないます.CTやMRIも病変やその周囲の評価に有用です.必要があれば、針を用いた生検を行ないます.
無症状であれば治療の必要はありませんが、皮膚・骨格病変の変化を注意深く観察する必要があります.通常、運動制限の必要はありませんが、骨格病変のため歩行困難な場合もあります.
この病気を診る医師
整形外科医:骨や骨格の変化を見ます.また骨折があれば、その治療を行います.
皮膚科医:皮膚の血管病変(静脈性奇形など)の評価を行います.
放射線科医:CT/MRなどで定期的な検査を行ないます.
2009.8.10、 2011.11.11 記