巨頭症—毛細血管奇形 症候群

macrocephaly-capillary malformation

M-CM syndrome

1997年に、この疾患概念が、Macrocephaly-cutis marmorata telangiectasica congenita (M-CMTC) として提唱されました.この症候群は、巨頭症に、皮膚の異常、脳・四肢・血管系の異常などを呈する症候群です.遺伝的な要素が知られており、PIK3R2遺伝子、PIK3CA遺伝子、AKT3遺伝子の変異が知られています.この疾患の診断は、臨床症状と遺伝子診断で行なわれます.全ての患者さんが同じ症状を呈するわけでは無いですが、巨頭症 macrocephaly、多小脳回 polymicrogria、 水頭症 、脳室拡大、小脳扁桃下垂、毛細血管奇形 capillary malformation (顔面、特に上口唇にあるのが特徴で、他の身体の部位にもある)、左右非対称や過成長の体幹、多指症.合指症、多趾症、合趾症、精神発達遅延、痙攣、筋肉の緊張低下 hypotonia、前頭部の飛び出し frontal bossingなどが認められます.


巨頭症は、脳実質の過形成 megalencephalyで起ることが多く、中でも小脳の過形成が多いとされます.さらに、水頭症 hydrocephalusが合併することもあります.水頭症は閉塞性の場合もあれば、交通性の場合もあります.小脳の過形成により小脳扁桃が脊髄方向に押され、(ヘルニア tonsilar herniationと呼ばれます)、脳幹も圧迫され、これによる神経症状を呈することがあります.小脳扁桃の下垂は、キアリ奇形 Chiari type I malformationと呼ばれることがありますが、この原因は、通常、後頭蓋窩の容積が小さいことが多く、小脳の過形成で起ることはありません.大脳皮質形成異常 cortical dysplasiaや多小脳回 polymicrogyriaも認められます.また腎(Wilms tumor)や肝(hepatoblastoma)の悪性腫瘍との関連も知られています.


男児差も人種差もないとされています.1997年に、初めて報告された以降、130症例ほどの報告がありますが、実数はもっと多いと思われます.


基本的には対症療法が主体ですが、多くの患児は、どこかの時点で、後頭蓋窩の減圧術 decompressionやVPシャント術、第3脳室開窓術 third ventriculostomyが必要とされます.


突然死をする患者さんが知られており、心疾患や不整脈以外に、上述の小脳の体積拡大による小脳扁桃下垂との関係が示唆され、早期の診断とVPシャント術や後頭蓋窩の減圧術が考慮されるべきとされています.


診断基準もいくつか、提唱されています.


大項目 3項目必要


巨頭症、毛細血管奇形、過形成・左右非対称、神経放射線学的な画像の異常(脳室拡大、透明中隔嚢胞、ベルガ腔、小脳扁桃下垂、大脳・小脳の非対称)


小項目 2項目必要


精神発達遅延、顔面正中の毛細血管奇形、新生児期の筋緊張低下、多指症・合指症、前頭部の突出、結合組織異常(柔らかな関節・皮膚の高度弾力性)、水頭症


Martinez-Glez 2010から


患者支援団体:   M-CM Network     http://www.m-cm.net/


Martinez-Glez V, Romanelli V, Mori MA, et al: Macrocephaly-capillary malformation: analysis of 13 patients and review of the diagnostic criteria. Am J Med Part A 152A:3101-3106, 2010


2012.3.13 記載、2013.7.29、2015.2.19 追記


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