巨大な肺動静脈瘻の塞栓術

 

肺の動静脈瘻の患者さんの治療には、塞栓術と外科的治療があります.後者は、内視鏡を使い患者さんへの侵襲度の低い治療を目指すことがあります.肺動静脈瘻が、複雑な構造の場合には、塞栓術が向かない場合もありますが、単純な構造であれば、大きな動静脈瘻でも治療は可能です.


以下は、最近治療した患者さんです.(ここに出すのは御本人の了解済みです).

40代の男性で、オスラー病の患者さんです.酸素飽和度が、86-90%程度で、それでも元気にしておられましたが、脳膿瘍になったために、その原因であり肺動静脈瘻の治療を行いました.現時点で、いままで治療した患者さんの中で、最も太い栄養動脈(12 mm)で、静脈瘤も40 mmの部分が2つあり、合わせると70 mm以上ありました.治療は、いつも通り局所麻酔で、患者さんと話をしながら行ないました.術後は、酸素飽和度が、97%になっていました.元来、スポーツマンの患者さんで、あまり呼吸苦など経験していない患者さんでしたが、退院後の話では、持久力が上がったようでした.








脳膿瘍のMRIです.左前頭葉に大きな膿瘍があります.

(膿みが溜まっています).





 
 

     治療前の血管撮影              治療終了時の血管撮影







胸部写真、塞栓術に使われたコイルが見えます.写真で分かるように、動脈側から静脈側にかけてコイルで閉塞しています.手前の栄養動脈だけを詰めると、動静脈シャントは消えません.








ぼやき:この患者さんには、コイルを多数使用して治療が必要でした.静脈側にコイルが、飛ばない様な工夫も必要でした.しかし、適正な使用をしているにもかかわらず、保健医療の支払い側から、1本14万円するコイルが、6本も認められず(つまり、払ってくれないということです)、これでは、手術の手技料(ほぼ、一本のコイル代の手術料です)もでない、無駄働きの事態です.日本のこのような状況下では、コイル塞栓術よりも、費用の安い外科的治療を進めている様なものです.



2012.9.6 記載、2012.9.24、11.21追記