肺の動静脈瘻を伴った遺伝性出血性毛細血管拡張症
Circulation 114:e48-e49, 2006
アメリカのCirculationという雑誌の2006.7.20号に、HHT関連で肺の動静脈瘻のため呼吸困難を呈していた患者さんの画像中心の症例報告が掲載されました.循環器内科の先生が、主著者で、私と一緒にコイルのよって治療した患者さんです.局所麻酔で十分治療が可能でした.
65歳の女性で、若い頃から貧血があり、最近、急速に呼吸困難が進行しましたが、治療直後から、全く呼吸困難はなくなりました.
左の図のAは、上部消化管の内視鏡所見で、毛細血管の拡張が認められます、Bは、舌の毛細血管拡張です、Cは、CTで認められた肺の動静脈瘻です.
右の図のAは、肺の動静脈瘻の選択的血管造影像で、Bは主病変に対するコイル塞栓術後で、そのすぐ横にさらに小さな動静脈瘻が認められます、Cは、小さな病変も閉塞した後の血管撮影です.
HHT関連で肺の動静脈瘻をお持ちの患者さんを通常の外来やセカンドオピニオン外来で診察しています.いつも思いますが、診察する毎に、新たな発見があります.教科書には載っているのですが、実際、目の前にいる患者さんで、経験するのでは全く実感が違います.
先日、肺の動静脈瘻からの胸腔内出血を起こした患者さんが来られました.治療後でしたが、資料を見せていただくと、小さな動静脈瘻が認められ、この病気からの胸腔内出血は稀に起こるとことは知られていますが、脳梗塞や脳膿瘍、呼吸困難以外に、小さな肺の動静脈瘻からでも、このような症状を起こすことがあるを実感しました.また、以前から言われていることですが、 脳梗塞や脳膿瘍、胸腔内出血を起こす前に治療が可能な疾患であり、また症状を出すまで、調べないと分からない疾患でもあります.
常染色体優勢遺伝するので、HHTの親御さんからHHTのお子さんが生まれる確率は50%です.一人の患者さんが診断されると、その御親族にはたくさんのHHTの患者さんがいる可能性があります.脳、脊髄、肺、肝臓、消化管、鼻腔、口腔粘膜など、多臓器に病変を持つ可能性のある病気で、かつ病変によっては、十分予防が可能な病気であり、その点、患者さんへの情報提供、説明が重要であると考えています.
2006.7.22記