オスラー病の診断 - 臨床診断と遺伝子診断の役割

オスラー病の診断方法には、2通りあります.一つは、臨床診断で、Curacaoの診断基準に則って行われます [1].もう一つが、遺伝子診断です.よく誤解されますが、遺伝子診断でないと診断されないと思う人が多いのですが、そうではありません.また遺伝子診断で確定しないと、オスラー病の確定はされない、というのも間違いです.遺伝子診断で、遺伝子のendoglinやALK1に病的な遺伝子変異が見つかれば、オスラー病であることは間違いありませんが、未だ発見されていないオスラー病の遺伝子の変異が、10-15%あり、遺伝子診断では、既知の病的な遺伝子変異はなかった、と診断されます.


Curacaoの診断基準 [1]


1.繰り返す「鼻血」.

2.皮膚や粘膜の「毛細血管拡張」.(口唇、口腔、指、鼻が特徴的で、他に眼球結膜や耳、体幹も).

3.肺、脳、肝臓、脊髄、消化管の「動静脈瘻(動静脈奇形)」

4.一親等以内にこの病気の患者さんがいる.


以上の4項目のうち、3つ以上あると確診 definite、2つで疑診 probable、1つだけでは可能性は低い unlikelyとされます.


この臨床診断基準は、よくできていて、例えば、オスラー病の御家族で16歳以上の未診断の御家族であれば、確診 definiteの場合、100%に遺伝子変異があるとされ、unlikelyの場合、98%に遺伝子変異はありません [2].つまり遺伝子検査を行わなくても、definiteとunlikelyでは、ほぼ間違いなくオスラー病の診断が可能ということになります.繰り返す鼻血があり、肺か脳に動静脈奇形があり、1親等以内にオスラー病の患者さんがいれば、遺伝子検査をしなくても、オスラー病は確定です.そうなれば、遺伝子診断の役割ですが、疑診 probableの患者さんに、オスラー病かどうかの確定をするのに役立つとされています.もちろん遺伝子診断には別の役割もあります.Type 1やtype 2が分かれば、より肺や脳に病変が多いか(type 1)、より肝臓に病変が多い(type 2)の傾向がわかり、予後の予測も可能ですし、症状が出ていない子供のオスラー病の診断にも有用です.


このような遺伝子診断の役割を理解して、遺伝子診断を受けられることをお勧めします.鼻血や毛細血管拡張は年齢が上がるとともに、出現するため、子供のオスラー病の診断は上記の臨床診断基準の適応はできません.それにしても2000年に発表された臨床診断基準 [1]は優れものです.


1. Shovlin CL, et al: Diagnostic criteria for hereditary hemorrhagic telangiectasia (Rendu-Osler-Weber syndrome). Am J Med Genet 91:66-67, 2000


2. van Gent MFW, et al: Hereditary hemorrhagic telangiectasia: How accurate are the clinical criteria? Am J Med Genet Part A 161A:461-466, 2013


2015.11.25 記載