オスラー病と鉄剤
オスラー病の患者さんの98%に鼻出血があります.41%の方が、毎日鼻出血があり、31%の方が、週に数回、14%の方が、年に数回鼻出血があります.このため、鉄欠乏性の貧血の方が多く、経口の鉄剤(iron tablet)や静脈注射で鉄の投与(iron infusion)が必要になります.消化管出血が慢性的にあれば、さらに貧血は悪化することになります.
約65%の方が、経口の鉄剤を服用し、21%の方が静脈投与を受けています.そして31%の方が、輸血を受けたことがあり、8%の方は、何回も輸血治療を受けたことがあります.
鉄剤を服用すると鼻出血が悪化することが4.8%の患者さんにあり、静脈投与を受けると6.5%の患者さんで、鼻出血が悪化するとされています.オスラー病の方が、皆鉄剤を飲むと、鼻出血が悪化するわけではなく、多くの方は、鼻出血には変化がありません.逆に、鉄剤の服用で7.6%の方が、鼻出血は改善し、静脈投与を受けている13%の方も、鼻出血が改善するとされます.
何故、鼻出血が悪化するかの説明ですが、鉄剤を服用すると、全員ではないですが、中には鉄の血中の濃度が急激に上昇し(例えば、服用後2時間後とか)、血管の内膜を障害するのではないかと考えられています.従って、鉄剤の一回投与量を減らし、分けて服用するのが一案かもしれません.ただし、鼻出血による貧血がある方は、鉄剤の投与をやめるわけにはいきません.一旦、血液データが改善し、一見貧血がなくなっても、これは鉄剤を服用しているおかげで、貧血がないように見えるだけであって、鉄剤の内服の継続は重要です.
参考文献
1. Shovlin CL, Gilson C, Busbridge M, et al: Can iron treatments aggravate epistaxis in some patients with hereditary hemorrhagic telangiectasia? Laryngoscope 126:2468-2474, 2016
2019.3.6 記