オスラー病と抗血栓療法

オスラー病の患者さんも、オスラー病以外の病気にかかることが当然あります.その中には、非弁膜症性心房細動、深部静脈血栓症、肺塞栓症、脳梗塞、心臓の外科的手術後、など抗血栓療法を必要とすることがあります.


この時、内服する可能性のある抗凝固薬の代表がワルファリンであり、最近は、新しい経口抗凝固薬(new oral anti-coagulant: NOACと呼ばれます)が脳出血の合併症が少ないという理由でワルファリンの代わりに服用される患者さんも増えています.また心臓からの塞栓症以外の脳梗塞には、抗血小板薬を内服することになります.これには、アスピリン、プラビックス、パナルジン、シロスタゾールなどが、該当します.


また、オスラー病患者さんは、血液中の第8凝固因子が増加していて、通常よりも血栓を形成しやすい状態にあります [1].これに対して、特に治療の必要はないのですが、血栓性の合併症を起こしやすいことを認識して他の病態の治療を考える必要があります.


問題は、オスラー病の患者さんのほぼ全員が、鼻出血で悩んでおられます.さらに消化管出血も合併している患者さんもいます.このような状況下で、上記の抗血栓療薬が安全に投与できるか、鼻出血を含め、出血性の合併症はどうなるかが問題です.投薬する医師側も、出血性の合併症を恐れ、投与を躊躇することがあります [2].結論的には、注意は必要ですが、必要な抗血栓療薬は、その適応通りオスラー病の患者さんにも投与が必要です [3].つまり、心房細動があれば、抗凝固薬をきちんと飲む必要があります.これら抗血栓療法の服用によって、多少の鼻出血の悪化は、認められるのですが、まったく投与ができないような状況になることは少ないとされています.またワルファリンを出血の合併症が少ないNOACに変えたりする工夫が必要な場合もあります.


肺動静脈瘻からの塞栓症予防にワルファリンによる内科治療がありますが、肺動静脈瘻の治療の基本は塞栓術です.カテーテル治療が可能な多くの場合は、ワルファリンよりも塞栓術が、当然優先されます.塞栓術により、治療をしたその日からワルファリンの投与が不要になることも珍しくはありません.



参考文献


1. Shovlin CL, Sulaiman NL, Govani FS, et al: Elevated factor VIII in hereditary hemorrhagic telangiectasia (HHT): association with venous thromboembolism. Thromb Haemost 98:1031-1039, 2007


2. Devlin HL, Hosman AE, Shovlin CL: Antiplatelet and anticoagulant agents in hereditary hemorrhagic telangiectasia. New Engl J Med 368(9): 876-878, 2013


3. Dittus C, Streiff M, Ansell J: Bleeding and clotting in hereditary hemorrhagic telangiectasia. World J Clin Cases 3:330-337, 2015



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2015.10.19 記


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