遺伝関連

 

HHT Q & A 50 から

Q31.オスラー病は遺伝すると聞いていますが、わかりやすく説明してください.

A.31. オスラー病の遺伝は、専門的には常染色体優性遺伝(じょうせんしょくたい ゆうせいいでん)とい います.人の身体は、非常に多くの種類のタンパク質から成り立っています.それぞれのタンパク質は、た くさんのアミノ酸がつながってできているものですが、このとき、どんな順序でどのアミノ酸が並ぶのか、 その情報を決定しているのが遺伝子です.したがって、遺伝子の情報が変わると、アミノ酸の並び方が変わ り、その結果、働きの違うタンパク質ができることになります.これが、病気や個人差の本態です.オスラー 病は、毛細血管の形成や維持に関係しているタンパク質の働きが悪いのが原因でおこる遺伝病ですが、この タンパク質の働きも遺伝子で決まっています.

どんな人でも、それぞれの遺伝子について両親から一つずつ情報を受け継いでいます.つまり、遺伝子とい うのは必ずペアで存在することになります.このとき、二つのうちの一方の遺伝子の働きが悪くなったため に病気になる場合と、両方とも働かなくなったときに病気になる場合があります.前者を常染色体優性遺伝 病、後者を常染色体劣性遺伝病といいます.オスラー病は、常染色体優性遺伝病ですから、二つある遺伝子 のどちらかの働きが悪いときに病気になります.具体的には、ENG (Endoglin エンドグリ)、ACVRL1 (ALK1 アルク1)、SMAD4(SMAD4 スマッド4)などの遺伝子の片方の働きが悪いのが原因です.さて、 親は子供に二つある遺伝子のどちらか一つを伝えることになりますが、どちらを伝えるかは、全くランダム です.つまり、親が病気の遺伝子を持っているときに、働きの悪い遺伝子を伝える確率は50%、働きのよい遺 伝子を伝える確率も50%ですので、病気が子供に遺伝する確率は50%となります.

Q32.遺伝学的検査をするメリットとデメリットを教えてください.またどこで検査ができますか?

A32. オスラー病の診断は、臨床症状がそろえば診断できます.その意味では、診断のために遺伝学的検査 は必須ではありません.ただし、オスラー病は年齢を経るごとに症状がはっきりしてくる傾向があり、若い うちには症状がそろわないことがしばしばあります.そんな場合には、遺伝学的検査で診断をつけることが できます.

遺伝学的検査をするメリットは、オスラー病の確定診断にいたること、今後どのような合併症が現れるのか について今までの報告からある程度の予測を行い、今後どの臓器を重点的に診察していくのかなど、将来起 こりうる合併症に対する対策をたて、患者さん本人のフォローアップにつなげられる可能性などがあげられ ます.また、患者さんの遺伝子の変化が判明すれば、症状の出ていない家族に同じ遺伝子の変化があるのか 調べることにより、早い段階で病気の可能性について知ることができます.逆に、御家族に遺伝子の変化が 認められない場合には、その方はオスラー病の遺伝子を受け継いでいないことが判明するので、将来症状が 出るかもしれない、という不安を打ち消すことができます.

一方、遺伝子診断で病気が判明する、ということは、患者さん自身が遺伝する病気であること、自分だけで なく家族も同じ病気である可能性がはっきりしてしまうこと、を意味します.その結果、患者さん自身の気 持ちが落ち込む可能性があること、家族関係に不和が生じる可能性、生命保険の加入や婚姻、就職時の障害 となる可能性が検査のデメリットとして考えられます.また、遺伝学的検査を受けても、結果が判明すると は限りません.つまり、見つかった遺伝子の変化が病気の原因なのかどうか、一人の検査結果だけからは判 断できない場合があり、そのときは「オスラー病の原因変異である可能性は、現時点では判定できません」

という結果が返されることになります.この場合、期待通りの結果がえられずがっかりされるかもしれませ ん.

実は、遺伝情報というのは、受精したての受精卵のときに全て決定されています.そして、その受精卵が細 胞分裂を繰り返すことにより個体ができあがっていくので、基本的に、身体の全ての細胞は同じ遺伝情報を 持っていますし、その情報は一生変化しません.つまり、遺伝学的検査では、一度調べた結果というのは将 来にわたり決して変わることがない、ということを理解した上で、本当に自分にとってメリットのある検査 かどうかを考え、デメリットの方が大きい場合には検査をしないという選択肢もあります.

検査のメリット・デメリットは一人一人異なります.自分にとって、また家族にとって、検査のメリット・ デメリットは何なのか、検査をする前に十分考えることが大切です.そして、陽性の結果がでた場合にどう 受け止めるのか、今後の方針に影響することがあるのか、などについて、あらかじめ、主治医や遺伝の専門 の医師と相談しておくことをおすすめします.

遺伝学的検査は、現在、体制の整備が進められており、近い将来には全国からの検査が受け入れ可能になる 予定で、その情報は、順次HPなどで公開していきます.基本的に個人からの依頼では受け付けはできませ んので、必ず医療機関を通して検査を受けることになります.また、検査の前には、臨床遺伝専門医による 遺伝カウンセリングを受けることが推奨されています.保険適用外の検査ですので、研究で行われる一部の 検査を除いて、検査費用は自己負担となります.

Q33.子供に遺伝するのが心配で,妊娠に踏み切れません.どのように考えたらよいですか?

A.33. オスラー病は常染色体優性遺伝病のため(Q31)、子供には、性別にかかわらず50%の確率で遺伝 します.ただ、同じ遺伝子の変化が原因でも、症状の出方は一人一人違いますので、子供さんに遺伝した場 合、お子さんがどのような経過をたどるのかの予測はできません.患者さんご自身の経験から、お子さんへ の遺伝について不安が高まっていらっしゃるのかもしれませんので、オスラー病について詳しい医師から、 患者さんの一般的な経過や、最新の治療・管理方針などについてお話を聞くことで、より客観的に考えられ るようになるかもしれません. また、患者さんの中には生まれる前に胎児がオスラー病であるのか調べたいと考えられる方もいらっしゃる かもしれませんが、現在日本では、胎児がオスラー病であるのかを調べるための出生前検査を行うことはで きません.(日本産婦人科学会は「出生前に行われる遺伝学的検査および診断に関する見解」を公表してい ますが、オスラー病では患者さんの症状に個人差があり、生後1年以内に亡くなるほど重篤であるとは言え ないことから認められていません.) お子さんに遺伝子の変化が受け継がれた場合、受け継がれなかった場合のそれぞれについて整理し、その上 で、お子さんを持つということが、御夫婦にとってどんな意味があるのか、親としてどのようなことができ るのか、ともに考えられることをおすすめします.その際には、患者さん自身の経験や病気についての知識、 対処法がお子さんの健康管理に役立てられるかもしれません.

Q34. 遺伝以外に、後天的な原因や遺伝子の突然変異の可能性はありますか?

A.34. オスラー病は、原因となる遺伝子の変化(変異)が原因で発症しますが、遺伝子変異は、親からの遺 伝した場合と、新規の突然変異による場合があります.両親や家族のかたの症状が軽いために病気と診断さ れていないこともあり、そんな場合は、突然変異と間違えられることもありますが、全体としては、親から の遺伝の方が圧倒的多数です. 

後天的な原因だけで発症することはありませんが、発症時期や重症度の個人差には、原因遺伝子以外の遺伝 要因や、環境要因などの後天的要因も関与すると考えられています.

Q35. 子供への遺伝率に男女の違いはありますか?

A35. Q33の回答にも記載しましたが、オスラー病は常染色体優性遺伝形式をとりますので、男女差はなく 子供には50%の確率で受け継がれます.ただ、症状の性差はあるようです.

Q36. 結婚前に、パートナーには、オスラー病患者であることを、話したほうがいいでしょうか?

A36. 患者さん一人一人で状況は異なるかと思います.結婚前にパートナーにオスラー病患者であることを、 伝えた場合、伝えなかった場合、伝えずにいて後からわかってしまった場合、それぞれのケースのメリット・ デメリットについて考えてみると良いと思います.遺伝カウンセリングなどで専門家の意見を聞きながらキ チンと整理してみると、答えが出しやすいこともあります.また、結婚前にパートナーやそのご家族に伝え る場合にも、遺伝カウンセリングを利用すると、より正確で客観的な情報が伝わりやすくなります.